火の中で苦しむ彫像
投稿者:SPCCWB (1)
私が小学生の時のお話です。
当時、私は家の近所のおじいさん、おばあさんとよく遊んでいました。とは言っても、当然同級生の友達と遊ぶほうがはるかに楽しいので、頻度は2月に一回程度です。たまに近所のおじいさんの家に上がり込んで、話をしたら少し果物をもらう。そんな程度のものでした。
その日も、あるおじいさんの家に訪ねて、話をしながらバナナをごちそうになっていました。
確かまだ暑い季節、お昼の3時ごろだったと思います。
話も飽きたころ、おじいさんが趣味で作っている、木の彫像?を取り出してきました。
私には一目見ただけでは何かはわかりませんでしたが、おじいさん曰く、「若い時の妻だ」と言っていました。
作成途中ということもあって、私はそう言われてもピンときませんでした。
私が見たその時の彫像は、高さが50センチほどで、しかもこれから人の形になっていくとは思えない姿でした。
なんというか、形だけ見ると炎のような姿をしていたのです。
そうは言っても、おじいさんの言うことを否定するのもおかしな話なので、「そうなんだ」とだけ返して、また話を続けました。
おじいさんの妻は、20年ほど前に亡くなってしまったんだとか。
彼女にベタぼれだったおじいさんは、それからもずっと彼女のことが忘れられなったそうです。
死ぬ瞬間までずっと美人だったと言っていました。
そんなこんなで私も中学生になってしましました。
おじいさんと遊ぶこともなくなり、彫像の存在も忘れ去っていました。
ですが、ふとした瞬間に思い出すこともあるものです。
本当に何気ない瞬間に、おじいさんの彫像のことが頭によぎりました。
そして、「久しぶりに遊びに行って、できあがった彫像を見せてもらおう」と思ったのです。
その次の日曜に、私はおじいさんの家を訪ねました。
おじいさんは、大きくなった私を見て、「あの時よりもデカくなったなぁ!」と肩をバシバシ叩いてきました。
玄関先で少し話をして、「柿があるから食べるか?」と言われたので、言葉に甘えて家に上がりました。
柿を食べながら談笑し、その中で私は「あの木の像って出来上がったの?」とおじいさんに尋ねました。
おじいさんは「ああ、去年やっと完成したよ!見るか?」と言います。
もちろん見ると答えて、おじいさんに彫像を持ってくるようにお願いしました。
持ってこられた彫像を見て、私は小学生のころ、炎のようだと思ったことを思い出しました。
おじいさんが持ってきた彫像は、あの頃と同じように、炎のような姿をしていました。
当時と違っていたのは、炎の中に、助けを求めるような姿の女性の像がいることです。
「美人だったからなあ」とおじいさんは言いました。
「死んでからの姿もびっくりするくらい綺麗だったよ。本当に。たぶん火葬されるときも綺麗だったんじゃないかな。」と続けます。
私の目に映る彫像の女性は、正直全く美人ではありませんでした。
本当に、ただただ苦しんでいる顔だったのです。
怖い
こええ…