脂肪のかたまり
投稿者:不知火 (1)
ノートをちぎって作ったそれには、わけのわからない文字がびっしり記されている。梵字にも似ていたが、リサのオリジナルらしい。机の上には化学の教科書と製作途中のお札が放置されている。
窓の外でよく振って汁気を切り、お椀をからっぽにしたリサが至極真面目くさって呟く。
「このお味噌汁も呪われてる」
「お母さんが作ったんだよ」
「憑かれてるの」
息苦しいほど密に貼られたお札に気圧されてドアを閉ざせば、かすれた声が追いかけてきた。
「夜はでちゃだめよ、おばけがいるから」
お姉ちゃん、頭がおかしいんだ……自慢の姉のショックを受け、部屋に逃げ帰る。
リサの主張はまるで筋が通らない妄想の産物だ。十三年間住んでるミキすら知らないおばけがうちにいるなんて、とても信じられない。それはそれとして全否定も心苦しく、食事を持っていく都度話を聞く。
「お姉ちゃんのいうそれ、どんな姿してるの」
「ぬっぺぽふ」
「知ってる、図鑑で見た……ぶよぶよした肉のかたまりみたいのだよね」
「うん、生っ白いぶよぶよ。何時間でもぼーっと立ってて、隙あらばこじ開けようとしてくんの」
「お札は全部お姉ちゃんが?」
「ホームページ見ながら作った。結界は安全。ミキにも一枚あげる」
隙間から覗くたび増えていくお札に比例し、加速する狂気に戦慄する。
うちにおばけなんかいないと証明したい。そうすればお姉ちゃんも安心して出てこれる、また元の仲良し家族に戻れる。
ある夜、ミキはリサに分けてもらったお札を握りしめてドアを開けた。おばけが実在するかどうか、他ならぬ自分の目でハッキリ確かめる為だ。
電気を消した廊下を歩いていくと、姉の部屋のドアを白いかたまりが塞いでいた。
全裸の父だった。
だらしなくたるみきった体はまるで脂肪のかたまり、図鑑に載ってたぬっぺほふによく似ている。
固唾を飲んで見守るミキに気付きもせずノブを回し、ガチャガチャ、往生際悪く引っ張る。ガチャガチャ、ガチャガチャ、ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。
布団を被って震える姉の幻が浮かび、前屈みの父を見届けるのに耐えかね、大急ぎで引き返す。
お姉ちゃんのいうとおり、うちにはおばけがいた。夜に徘徊する脂肪のかたまり、娘の部屋のノブを無言で回す父。
アレが部屋の前で待ち伏せてたら正気でいられる?
母に言うべきか否か、悶々としながら引き続き姉の食事係をしていた時、ミキはあることに気付いてしまった。
「お姉ちゃんのお味噌汁だけ別?」
「栄養付けてもらいたいの」
笑いながら別のお鍋の中身を取り分ける母。父はテーブルで夕刊を読んでいる。トレイを持って階段を上がる最中、湯気に乗じた匂いにかすかな違和感を感じる。
お味噌汁を必ず捨てるお姉ちゃん、机の上に開かれた化学の教科書。もしやと思って見直したお札には梵字に似せた「As」の二字が仕込まれていた。
意味不明でこわい
両親が・・・逃げの一手のみしかない
異色の怪談
父親が絡んでるのは途中感づいたが、母親までとは思わなかった。
一家離散の理由¿
いやオネェちゃん助けたれや…
全速力で逃げろ
毒物入ってないとしても味噌汁は塩分多いから植物は萎れるけどね。
読書の面白さが、少しだけ分かった気持ちに…加熱しても死なないボツリヌス菌ぼつ
1 歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べることによって乳児ボツリヌス症にかかることがある様で、1歳未満の赤ちゃんにハチミツやハチミツ入りの飲料・お菓子などの食品は与えないように外装の袋に表示されている物や無い物を見ます。食料品難にコウロギパンなどは、体験したく無いなー。イナゴ繋がりかも青カビ、ゴキブリ、、、AGがヒソって本当?
>AGがヒソって本当?
Asって書いてあるけど
児童相談所行こうよぉ……
モーパッサンの名作『脂肪の塊』と同じタイトルに惹かれ読んでみたが、別の意味で「超胸糞」な本作。 中1の妹は、家出したとあるが、児相か警察に駆け込み、中3の姉を救えたのだろうか。崩壊した家族、破綻した親子関係。化け物や幽霊より恐ろしい「人間」の罪業。コロナ禍で一家全員、家に引きこもるしか無いとなると、脆弱な関係しか築けてないと、こんな事態になりかねないのかも。
父からの性的虐待
それを知った母の憎しみは長女に
ってことだろうか
いやでもそれなら姉は素直にそう言うか
ううん
幽霊って怖いとかじゃなくて腹立つ。
人生めちゃくちゃにしやがって。幽霊見つけたらぶっ殺す
フィクションだよな怖すぎるンゴ
なんで優等生の姉を殺すのか?