私は本当に人間の子供なのか…

　これは私の母が経験した話です。
　当時私はまだ生まれておらず、我が家は父母と姉(2歳)の3人暮らしでした。普段寝るときは3人で川の字になって寝ていて、父が夜勤の日は姉と二人で寝ていました。

　ある日、父は夜勤だったので姉と二人でいつものように寝ていると、母は夜中に目を覚ましてしまいました。隣をみると、姉は変わらずスヤスヤと寝ております。とりあえずまた寝るか、と目を閉じようとしたとき、母はあることに気づきました。
　ぼおっとわずかな光を発しながら、光の玉が天井近くに浮かんでいたのです。
　なんだあれは、と驚くのもつかの間。なんとその物体は猛スピードで母のほうに近づいてきて、腹部に激突してきました。
　母はあまりの痛さと驚きで悲鳴を上げました。しかし、不思議なことに横に寝ている姉は気づきませんし、近隣の人も気づいた様子はありません。そのまま物体は母の腹の中に入ろうとするようにぐいぐいとぶつかります。
　もうだめだ、死ぬ！と思った瞬間、母は目を覚ましました。どうやら夢だったようですが、じんわりと腹部にまだ痛みが残っていました。とても気味悪さを感じたものの、父や姉を怖がらせまいと、このことは話さず、胸の奥にしまっていました。

　そしてそんな恐ろしい夢を忘れかけていたころ、驚くべきことに、母は再びその夢をみることになりました。そしてその時も、どれだけ悲鳴を上げても周囲が気づくことなく、物体は母の腹の中に入ろうとしてきました。2度目ともなるとほんとに恐ろしかったそうです。

　そんな2度目の恐ろしい経験をしてすぐあと、さらに驚くべきことが起きました。母は不妊で長らく悩んでいたのですが、なんと妊娠が発覚したのです。あんなにできなかったのに、なんで？と夫婦で不思議に思っていたそうなのですが、母にはあの光の玉が関係していないとは思えませんでした。そのまま順調に赤ちゃんはそだって、その後生まれたのが私になります。大人になってこの話を聞かされたとき、なんとも気持ちが悪く、本当に自分は人間の子なのかと思わざるをえませんでした。

　あの時の光の玉は、いったいなんだったのでしょうか。おなかに命が宿るときに見せたものなのか、それとも命が宿るのを邪魔するものだったのか。そして私は本当に人間の子供なのか…。今でも謎のままです。