カンカンカンカン
投稿者:ねこきち (21)
高校生の頃の話。
地元は今でこそ再開発されて民家も街灯も多くて夜もそこそこ明るいが、10年前は日が暮れると本当に真っ暗だった。
私は隣町の予備校にバスで通っていたが、バス停から家までは徒歩10分くらいあり、その夜道が本当に嫌だった。
怖さを紛らわすため、バスを降りてからずっと携帯電話を見ながら歩いていた。予備校から帰る21時ぐらいになると人通りもないし、車も殆ど走ってないから、ながら歩きにも大して後ろめたさや危機感は無かった。
バス停と家の丁度中間地点に、私鉄の踏切がある。その踏切は当時は所謂「開かずの踏切」で、一度遮断機が下りると中々渡れない。一刻も早く家に帰りたい状況でこの踏切に引っかかると、(早く開いてくれ~)と思いながら携帯電話を凝視していたものだ。
その日も丁度遮断機が下りてきたタイミングで踏切前で足止めされた私は、警報機のカンカンカンカンという音を聞きながら、携帯で友達のメールを見ながら遮断機が上がるのを待った。
電車が一本通っても、相変わらずカンカンカンカンという音がしている。次の電車が来るからだ。この踏切は一旦閉じると、大抵二、三本の電車をやり過ごさないとならない。イライラしながら携帯を見続けると、ニ本目、三本目の電車がゴーーーーッという音を立てて通り過ぎていった。
だけど、まだカンカンカンカンと音がする。まだ渡れないの?勘弁してくれと思いふと視線を上げると、なんと遮断機はもう上がっていた。それなのにカンカンカンカンと音は鳴っている。
え?え?と思って左右を見渡すと、線路の向かいの警報機の横に、幼稚園児くらいの子供が一人立っていた。
カンカンカンカンという音に合わせて口をパクパクさせながら。
あまりに予想外のことに驚いて、私は悲鳴を上げて逆方向へ走った。全力疾走でバス停前のコンビニまでたどり着くと親に電話して車で迎えに来てもらった。
車の中で親に先程の話をしたが、踏切に子供なんていなかった、もしこんな時間にそんな小さい子がいたなら警察に連絡しないとなどと言われるだけだった。
それ以来、どんなに怖くても歩きながら携帯を見ることはしない。
またふいに顔を上げた時、目の前にとんでもないものが立っていたらと考えると、暗い夜道よりも怖いから。
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