これは私が警備員の仕事で花火大会の交通整理をしていたときのことです。
私が仕事で行った花火大会はその地域では、昔からある夏の名物花火大会で、観客が周りの市町村や他県からも来る大きな花火大会です。
私はその花火大会を見に来たお客さんたちが車で帰る途中の田んぼの真ん中にある交差点付近で交通整理をしていました。
私はその場所に行くのは初めてで、同僚の車に他の同僚たちと相乗りして、各地点の交通整理箇所で一人ずつ降ろされたのです。
交通整理する場所は街灯もない真っ暗な交差点で、近くに田んぼがあるくらいのなんとも辺ぴな場所でした。
しばらくすると、花火の音が遠くで聞こえ始め、花火大会が始まったのがわかり、しばらくは車は来ないだろうと思い、歩道の縁石で休憩していると、田んぼに沿って流れている川の流れる音が聞こえたのです。
夏の暑い時期でもありましたので、川の近くで涼もうと思い、川の方へ歩いていきました。
私が田んぼと田んぼの間を歩いていると、いきなり左側から目線を感じて慌てて振り返ると、川端に男の子が立っているのが見えたのです。
私はその男の子が普通じゃないのを感じました。
なぜなら、周りは真っ暗なのにその子だけなんとなく青白く見え、周りに家族らしき人もおらず、たった一人でポツンと立っていたのです。
私は直感的にその異常な雰囲気が怖くなり、川に行くのをやめ自分の仕事配置に戻りました。
交差点から川を見ると、まだその男の子がずっと立っていました。
私は気味悪いなと思いながらもその子が気になり、交通整理の準備をしながら時折、川の方を確認していました。
それでもその子は動かず、その場でじっと立っていました。
今思えば、私に気づいていなかったのだと思います。
しばらくすると花火の音も消え、私が立っていた交差点にも車がちらほらと通り始めたので、私の仕事も忙しくなり、川の方を見る余裕もなく慌ただしく仕事に集中し、気づけば同僚が運転する迎えの車が私を迎えに来てくれていました。
同僚の車に乗り込む前に、川の方を見ると、そこには男の子はもういませんでした。
後日、私はその体験がずっと気になって、パソコンでその地域の過去のニュースを読んでいると驚きの事実が判明しました。
私が見たあの川で約10年前に小学2年生の男の子が川遊びしているときに溺れて亡くなっていたのです。そしてその亡くなった日があの私が交通整理していた花火大会の日だったのです。
私は妻にその話を打ち明け、2人で休みの日にその川へあの男の子のお参りに行きました。
そこには夏休みで川遊びしている小学生がいて、私たちはその子らに気を付けるように声かけをしてお参りしました。
川は子どもたちを見守るように穏やかに静かに流れているように感じました。
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