思い出のビデオテープ

事故当日は一週間ほど続けての雨が降りしきる日でした。
その日も9割方の生徒は教室で勉強に励んでいました。昼休みも半分過ぎた頃でしょうか、突然廊下から女生徒の悲鳴が響き渡りました。
「なんだなんだ」と言いながら廊下に出て悲鳴の先に向かってみると
先程のあいちゃんが蒼い顔をして震えていたため、どうしたのか聞くと階段下を指さします。
覗いてみると佐々木が頭から血を流して倒れていました。
そこからは大騒ぎです。

先生たちを呼びに行ったり救急車がやってきたりと、中には刑事の真似をして
聞き込みをする人もいました。
後から聞いた話ではどうやら雨で練習できない佐々木が廊下で上り下りで運動をしている際に雨でぬれた床で滑って転げ落ちたようです。
その後卒業式も参加できず結局どうなったのかはわかりませんでしたが

A曰く脊髄損傷とかで下半身が全く動かせず一生車いす生活を送ることになり選手生命も完全に閉ざされていたようです。

そんな佐々木とあいちゃんがなぜ結婚したのかはどうやらあいちゃんが何度もお見舞いに行ったりリハビリに何度も付き合ううちに仲良くなり交際を得て結婚し今はデザイン会社を一緒に経営しているとの事でした。

そんな話をしているとAから「ビデオテープ誰か持っている？」という話になりました。
そのビデオテープは中学校卒業式の日に先生から一年の思い出を撮影しておりビデオテープにダビングされたもので全員にプレゼントしてくれました。

ただ既に15年以上前のものなためか自分のは保管が悪かったのか既に見れなくなっていました。
周りに聞くとまだ見れるとの事で持ってきてもらい見る流れになりました。
1時間程度の映像で思い出を振り返りながら見ていると女性のTさんが突然「今のところ巻き戻してくれない？」と言い出しました。

その個所はTさんを含む女性と3人が先生の撮影の元美術室で作品の紹介をしている所でした。
映像としては至って普通でしたがTさん曰く奥の校舎が気になるとの事でした。
私の中学校では校舎が3つあり美術室がある校舎が一番手前でその次が自分たちのクラスがあり、その奥が1・2年生の校舎となっていました。

気になる個所を指さすのですがかなり遠くてわかりませんでしたが、二人が何かをしているような映像でした。

そんな話をしていると23時も過ぎお開きとなりました
翌日Aからラインが来てTさんの言っていた箇所が気になるんだけどどうにかならない？と聞かれました。
そういわれてもと思いながら、知人にITの仕事をしているのがおりTさんからビデオテープを借りてデータ化をお願いすることにしました。
データ化することでパソコン上で管理できるのでズームも出来て何が写っているのか分かると思ったからです。

お願いして二日経った頃、知人から連絡が来て開口一番に「事件の証拠？」と言われました。
何のことかチンプンカンプンでしたが話を聞いているとTさんが指摘した箇所には男子生徒と女子生徒が立っており女子生徒が男子生徒を突き飛ばして画面から消えていく映像が写っていたようです。
自分でも確認しましたが確かにそう映っておりしかも男子生徒が佐々木で女子生徒があいちゃんでした。
ということは、あれは事故ではなく事件と思った時居酒屋で話をしていた事を思い出しました。
二人の結婚式の際にあいちゃんが「欲しかったものがやっと手に入った」と言っていたそうです。
もしかするとあいちゃんは佐々木を手に入れるために階段から突き落としてサッカーを出来なくして落ち込んでいる所に付け込んで手に入れようと考えていたのではないかそう考えると怖くなりました。