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ヒトコワ

かりなさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

真夜中に招き入れてしまったおばあさん
短編 2020/11/21 20:33 3,025view
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新居に引っ越して三か月。念願の戸建てで、毎日が幸せの日々でした。しかし、ある日、気味の悪いことが起こったのです。

時計は22時になろうとするところ。「そろそろお風呂に入って寝る準備をしなきゃね」と二人で片付けをして、二階に上がります。
我が家はお風呂と寝室が二階にあるので、夕食後、片付けをしたら一階には人がいなくなります。戸締りを確認し、二人で二階に上がりました。
夫が先にお風呂に入るので、私は寝室でテレビを見ながら待っていました。その時です。

どこかでドーンという音がして家がかすかに揺れるような衝撃がありました。しかし、本当にかすかな揺れだったので、私は気のせいだと思ってテレビを見続けます。
ドンドンドンドン。どこかでまた音がしたような気がします。「いやいや、気のせいでしょ」とテレビのチャンネルを変えようとした時に、突然、ピンポーンとインターホンの音が家の中に響きました。「きゃっ!」突然のことに思わず小さく叫ぶ私。夫はお風呂に入っているので、仕方なく私一人で一階のインターホンを見に行きました。

真っ暗な階段を下りてインターホンの画面を確認すると、見知らぬおばあさんが立っているではありませんか。こんな時間に?何故?と思いましたが、とにかくインターホン越しに「何の御用でしょうか」と尋ねてみました。すると、「ちょっとお尋ねしたいことが…出てきていただけますか」と言います。不審に思ったのですが、おばあさんが困っている雰囲気なので、邪険にできないと思い、玄関へ向かいました。玄関の扉を開けると、小柄なおばあさんがいました。「どうされたんですか?」と聞く私。おばあさんは「トイレを貸してください」と私を見上げました。「ト、トイレですか?」こんな時間に非常識だし、他にも家がある中でどうして我が家に?と疑問ばかりが浮かびましたが、緊急事態だったら可哀想だと判断して「どうぞ」と招き入れてしまいました。

おばあさんは「いいんですか?ありがとうございます」と言いながら中に入り、「あら、こんなにたくさん人がいるのにお邪魔しちゃってごめんなさいね」と呟きました。「いえいえ」と言いながら、私は思いました。どこにたくさんの人が見えたのでしょうか。一階には私以外誰もいないはずなのに。

「トイレはここです。どうぞ」と私が促すと嬉しそうに入っていくおばあさん。なぜ招き入れてしまったんでしょう。5分ほど過ぎたところで、ジャーと水を流す音が聞こえます。とにかく早く出て行ってほしいので、おばあさんを出口へさっさと連れていきました。「親切な人がいてよかった。ありがとう」とおばあさんは笑顔で帰っていきました。

すかさず、トイレが荒らされていないか、盗られたものはないかを確認しますが、特に異常は無いようです。「おーい。どうしたの?」二階から夫が声を掛けてきました。

事情を説明すると、夫は不審なことが無いか一階や家の周りなどを確認してきてくれました。「異常は無かったけど…その人、本当に実在してたの?痕跡がないじゃん」と笑う夫。
「やだ、怖いな。ちゃんといたってば」と言いながらも、あまりに唐突で衝撃的なことだったために、自分でも自分が信じられませんでした。夢だったかも…。
しかし、意外なことで私たちはこれが現実だったと思い知らされました。

翌朝、夫が「ちょっとさ、驚かずに見てほしいんだけど…」と私を起こしに来ます。ぼんやりとする頭で一階に降り、トイレのドアを見て私は思わず息を飲みました。ドアノブのあたりに、すでに色が変わって錆のようになった血が付着していたのです。「あと、こっち…」夫に促されて玄関を開け、インターホンを確認すると、そこにも同じように血液が付着していました。よく見ると、家の外壁や玄関付近の砂利、道路から玄関に上がる階段や植え込みなど、様々なところに血のような跡があります。

「なにこれ…」昨夜は暗くて気が付かなかったけれど、明るくなってこんな状態になっているとは思わなかったと夫は溜息。私だってこんなの想定していません。しかし…。「これでおばあさんが実在していたことが分かったね」そう言いながら半日かけて血痕を洗い流し、もう二度と、見知らぬ人を家の中に招いてはいけないと固く決意をしました。以上が、私の体験した気味の悪い話です。

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