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心霊

カラカラさんさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

無邪気と廃墟
長編 2026/10/30 16:08 341view

友達はしばらく黙ったあと、私の口元を指差しました。

「口、拭けよ」

手の甲で口を拭うと、黒っぽい泥のようなものがべっとりと付いていました。

私は気持ち悪くなって、何度も口をすすぎました。

それでも、舌の奥には妙な甘さが残っていました。

バターのような、花のような。

あの家で嗅いだ甘い匂いと同じでした。

その日の夜、私は高熱を出しました。

病院で胃腸炎だと診断を受け、点滴処置をしてもらってようやく落ち着きました。

母から「あんた何食べたの?」と呆れ半分に聞かれ、恐る恐る事の顛末を喋りました。

母は最初、冗談だと思ったらしく、笑いながら聞いていました。

ところが、私があの家の特徴や、割烹着を着た女性のことを話すと、急に表情が変わりました。

「その女の人、どんな顔してた?」

「普通のおばさんだよ。優しそうな人だった」

「髪は?」

「黒くて、後ろで結んでた」

母は何も言わず、台所へ行きました。

しばらくして戻ってくると、父に電話をかけ始めました。

その日の夜、父が仕事から帰ってくるなり、私に尋ねました。

「あの家に入ったって本当か?」

私は頷きました。

父は深いため息をつき、しばらく黙っていました。

「あそこはな、昔から誰も住んでないんだ」

「でも、おばさんがいたよ」

「いや、住んでないんだ」

父の話では、あの家には昔、若い夫婦と小さな女の子が暮らしていたそうです。

夫婦は仲が良かったらしいのですが、ある冬、女の子が事故で亡くなった。

それから母親の様子がおかしくなったそうです。

亡くなった娘のために、毎日お菓子を作り、居間に花を飾り、誰もいない部屋に向かって話しかけていた。

やがて父親も家を出てしまい、母親は一人になった。

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