結局、その方は病院に担ぎ込まれた時には、すでに息を引き取っていたそうです。
後日提出した原稿用紙には、ただ一言、本当の気持ちを覆い隠すように「普通に楽しい遠足でした」とだけ書いて締めくくりました。
でも、今でも雨の日になると、あの黒い血溜まりの記憶と一緒に、あの時すれ違った「何か」の視線が、首筋にまとわりついて離れないのです。
それから長い年月が過ぎ、私は大人になりました。
霊感など一度も感じたことがない私が、人生でただ一度だけ目撃した「亡霊」があります。
あれは車を運転していたときのことです。
前方の路地に、自転車を押して道を渡ろうとしている人影が見えました。渡りきるのを待とうとブレーキを踏み、速度を落としてその人の様子を伺っていた――その瞬間です。
横断歩道の半ばで、その人はまるで最初から存在しなかったかのように、すっと消えてしまいました。
ハッと息をのんで周りを見回したとき、冷や汗が吹き出しました。
そこは、あの日の最悪な遠足で、私が目撃した事故現場とまったく同じ場所だったのです。
あの人は今も、助けを求めるように、あの場所で消えない横断を繰り返しているのかもしれません。
そしてもしかしたら、ブレーキを踏んで自分を見た私を、あの日と同じ眼光で睨み返していたのでしょうか。
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