「違う、お前はちがう。私は分かっている、お前は違うんだ。とってるだけのくせに、なれないくせに、なりたいだけのくせに。ほんとじゃないくせに!」
まだ小学生だった妹の、見たこともない血走った目と、異様な熱を帯びた声に頭が真っ白になった。
直後、恐怖が怒りを超えて溢れ出し、私は妹の前にひざまずいて声を上げて泣いてしまった。帰ってきた母が慌てて飛んできたが、四つ下の妹に泣かされたなどとは恥ずかしくて、到底言えっこなかった。
時は流れて、妹は高校生になった。
あの頃のことも、今となっては笑い話……にするには少し歪んでいるが、懐かしい思い出だ。
ある日の夕方、家に帰ると母はまだ仕事でリビングには妹が一人で座っていた。
ふとあの頃を思い出して、からかい交じりに口を開いた。
「そういえばさ、昔、変なこと言ってたよね。『お姉ちゃんはほんとじゃない』とかさ? あのときは本当に怖かったわぁ」
妹はすました顔で緑茶の湯呑みに口をつけ、それから、ぽつりと言った。
「だって、ほんとじゃないからね」
まだそんなことを言っているのかと、「あの頃の〇〇はもっとちいちゃくて可愛かったな」と頭をなでようとして――できなかった。
パシン、と乾いた音がして、伸ばした手を妹がはたき落としたのだった。
妹は、私なぞ見たくもないと言わんばかりの冷徹な瞳で、
「ほんとじゃないくせに、私を呼ぶな」
忌々しげに、つぶやく。
「……名前、絶対教えないから。お姉ちゃんのこと、渡さないから」
意味が分からない。そのときの私は、さぞ間抜けな顔を晒していたことだろう。


























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