「違う。」
「お前じゃない。」
「とってるだけのくせに。」
「なれない。」
「ほんとじゃない。」
まだ小学生だった妹の、見たこともない血走った目と、異様な熱を帯びた声に頭が真っ白になった。
直後、恐怖が怒りを超えて溢れ出し、私は妹の前にひざまずいて声を上げて泣いた。帰ってきた母が慌てて飛んできたが、四つ下の妹に泣かされたなどとは恥ずかしくて、到底言えっこなかった。
時は流れて、妹は高校生になった。
あの頃のことも、今となっては笑い話……にするには少し歪んだ、懐かしい思い出だ。
ある日の夕方、家に帰ると母はまだ仕事で、リビングには妹が一人で座っていた。
ふと、あの頃のからかい交じりに口を開く。
「そういえばさ、昔、変なこと言ってたよね。『お姉ちゃんはほんとじゃない』とかさ? あのときは本当に怖かったわぁ」
妹はすました顔で緑茶の湯呑みに口をつけ、それから、ぽつりと言った。
「だって、ほんとじゃないからね」
まだそんなことを言っているのかと、「あの頃の〇〇はもっとちいちゃくて可愛かったな」と頭をなでようとして――できなかった。
パシン、と乾いた音がして、伸ばした手を妹がはたき落としたのだった。
妹は、私なぞ見たくもないと言わんばかりの冷徹な瞳で、私を見据えて、
「ほんとじゃないくせに、私の名前を呼ぶな」
忌々しげに、つぶやく。
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