奇々怪々 お知らせ

不思議体験

Daydreamさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

霧の中で見た物
長編 2026/08/01 14:19 414view

缶コーヒーと、温かいおでんを買う。

白い蛍光灯。

コンビニの明るさ。

人の気配。

それだけで少し安心した。

ようやく落ち着いた頃、A子が震える声で話し始めた。

「山に入った瞬間から……誰かに見られてる気がした」

俺は黙って聞いていた。

「霧が出た時……」

A子の声が震える。

「十歳くらいの男の子が……」

そこで一度、言葉が止まった。

「……フロントガラスに張り付いてた」

背筋に、ぞくりと冷たいものが走った。

「中を……覗いてた」

俺は黙った。

「それから……俺君の声が聞こえなくなった」

「口だけ動かして、何か言っていたけど」

A子は震える手で缶コーヒーを握っている。

「墓地では……」

声が小さくなる。

「車の周りに……死人が何人も立ってた」

A子の涙が止まらない。大粒の涙がこぼれ落ちていた。

「俺君が外でタバコを吸ってた時……」

そこでA子は俺を見た。

そして、震える声で言った。

「あの人たちが言ったの」

――お前はここで、

――この男に殺される。

俺は思わず苦笑した。

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