男の背筋が凍ります。
すると、別の地蔵が叫びました。
「よこせ……!」
「もっと、よこせ……!」
そして最後に、ひび割れた地蔵が、濁った声でこう言ったのです。
「ハラワタ……よこせ……」
「首を……よこせ……」
男は声も出せず、戸を蹴破るようにして外へ飛び出しました。
土砂降りの雨の中、裸足のまま山道を駆け下ります。
そして、ようやく麓の番屋へ逃げ込みました。
男は震えながら、今夜見たものを必死に話しました。
しかし、話を聞いた役人たちは別のことに気づきました。
男が持っていた傘のことです。
調べてみると、それらは町で盗まれた高級な洋傘でした。
男は、傘泥棒としてその場で捕らえられました。
後日。
牢屋に入れられた男は、毎晩のように同じ言葉を繰り返すようになったそうです。
「地蔵が……」
「地蔵が来る……」
そして、誰もいない牢屋の隅を見つめながら、怯えた声でこう叫ぶのです。
「欲しぃ……もっと欲しぃ……」
――その声は、男の声ではなかったとも言われています。
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