神社の絵馬について教えてほしいことがあります(長文です)
最初に少し説明しておきます。自分は怖い話や心霊系が好きで、こういうサイトもよく読んでいます。ただ読む専門で、体験談を書いたことはありません。実際に説明のつかないことを体験したことも、正直それほどなかったです。でも去年からずっと頭に引っかかっていることがあって、誰かに聞いてみたいと思い続けて、やっと書く気になりました。長くなりますがよろしくお願いします。
去年の5月のことです。
地元が静岡県東部の友人(仮にKとします)に誘われて、地元の山の中にある神社に行きました。Kは実家の用事で帰省するタイミングがあって、「変わった神社があるから来ない?」と連絡してきました。「変わった」という言い方だったか「面白い」だったか、少し曖昧です。とにかくそういうニュアンスで、その軽さを今になって何度も思い出します。
自分は電車でKの地元の駅まで行き、落ち合ってから車で移動しました。市街地を抜けると道は細くなり、山に入るにつれて舗装が消えて砂利道になりました。スマートフォンはいつの間にか圏外になっていました。木が両側から迫り、とにかく狭い道を進んでいました。5月の夕方過ぎだったのですが車内がなんか薄暗くて、少し不気味に感じたのを覚えています。
「本当にこんなところに神社があるの」と聞いたら、「ある。小さいけど、子供の頃ひとりでよく来てた」とKが言いました。ひとりで、という部分が引っかかりましたが、深くは聞きませんでした。
路肩に車を停め、苔だらけの崩れかけた石段を登ると、小さな境内がありました。
想像よりずっと狭かったです。社殿は正面一間ほどの小さなもので、建物全体が黒ずんでいました。屋根には苔が分厚く育ち、賽銭箱の木は腐りかけていて格子の一部が欠けていました。縄も紙垂も原形をとどめていませんでした。手水舎には水が出ていませんでした。
人が来ている形跡がまったくありませんでした。参拝者が残したものが何もなく、静かというより、生き物の気配がない感じでした。風が抜けるたびに湿った落ち葉の匂いと、それとは別の何かが混ざった匂いがしました。なんの匂いかはわかりません。
「ここって何の神社なの」とKに聞きました。
「知らない」とKは言いました。「子供の頃からなんとなく来てただけで、名前とか何を祀ってるとか、一回も考えたことなかった」
なんとなく来てた、という言い方が妙に記憶に残ってます。
参拝して境内を見て回ると、社殿の右側に小さな木の棚がありました。絵馬掛けでした。
神社の大きさにしては掛けてある絵馬が多いなと感じました。ほとんどは古く、文字が雨に溶けて読めなくなっているか、木そのものがぐずぐずに腐りかけているものでした。
その中の一枚なのか、地面に落ちていた絵馬に目が行きました。
ほかと木の色が全然違いました。でも色よりも先に目を引いたのは写真でした。
証明写真くらいの大きさの写真が、絵馬の左側に貼ってありました。黒い長髪の若い女性が正面を向いている写真でした。白いシャツを着ていました。表面がつるりとした仕上がりで、ラミネート加工か何かだと思いました。朽ちかけた絵馬が並ぶ中に、その一枚だけが生々しく光っていました。見た瞬間になんとなく嫌だと思いました。理由はうまく言語化できませんでしたが、確かにそう思いました。
写真の横にびっしり文字が書いてありました。
読み始めて、すぐに普通の願い事ではないとわかりました。
誰かへの恨みでした。「あいつが」という言葉で始まっていました。最初のうちはまだ文章の形をしていましたが、途中から崩れていき、後半は何を言いたいのかよく読み取れない部分が多かったです。「なんで」「許せない」「ずっと」「あの人は何もわかってない」「絶対に」という言葉が脈絡なく繰り返されていました。「許せない」という言葉だけで三回か四回は出てきたと思います。
句読点も改行もなく、ただ感情に任せて書いたような文章で、最後の数行は木に押しつけるような筆圧で書かれていて木の表面がわずかに削れていました。
ずっと読んでいられませんでした。怖いというより、居心地が悪かったです。他人の感情の一番深いところに、了解もなく踏み込んでしまったような感覚でした。
「裏も見てみよう」とKが言いました。「やめよう」と言いましたが、Kはもう絵馬を持ち上げていました。
裏には、住所と名前が書いてありました。
静岡県内の住所で、名前は女性のものでした。文字は表と同じ筆跡で、同じように力を込めて書かれていました。木がへこんでいました。
写真の女性と、裏の名前は同じ人物なのか。これは誰かが特定の人物を呪うために奉納したのか。それとも、この絵馬を書いた人が自分自身の感情を吐き出すために、自分の写真と住所と名前を書いたのか。何もわかりませんでした。今もわかっていません。
「名前で調べてみよう」とKが言いました。「やめよう」と言いました。なぜそう思ったのかうまく説明できませんが、調べてしまったら何かが変わる、良い方向には変わらない、という感覚だけがありました。Kは少し考えてからスマートフォンをしまいました。
絵馬を元の場所に戻して、二人で足早に石段を下りました。
一つKに言わなかったことがあります。自分はスマートフォンで写真を撮っていました。表の全体、文字の部分を大きく撮ったもの、裏。ほとんど無意識でした。止める理由がないはずなのに、Kに言えませんでした。やましいことをしたような感覚があったのだと思います。























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。