まるで、生きた生き物が逃げ出すような動きでした。
男性はそれを見た瞬間、バールを落とし、「すいません、今日これ以上は無理です」と顔面蒼白になって、道具をまとめるのもそこそこに帰ってしまいました。
私はその日のうちにホテルへ避難し、そのマンションを格安で売却しました。
不動産屋に前の住人のことを問い詰めましたが、「普通の会社員の方で、特に何もありませんでしたよ」の一点張り。ただ、その住人も入居してわずか3ヶ月で、夜逃げ同然に退去したことだけが後から分かりました。
あの時、壁の裏から逃げ出した「白いもの」が何だったのか、今でも分かりません。 ただ、取り出したあの髪の毛だらけの鏡だけは、業者が置いていってしまったため、今も私の今の家のクローゼットの奥に、厳重に布を巻いたまま眠っています。
どうしても、捨てる勇気がでないのです。
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