(吉川さん、起きちゃったかな?)
そう思い、寝室の襖をそっと開けた。
部屋の中央にはベッド。
吉川さんは、確かに眠っている。
呼吸も安定している。
「……?」
部屋を見渡すが、特に変わった様子はない。
ただ、薄暗い寝室の隅。
棚の上に置かれた日本人形が、
まるで眠る吉川さんを見下ろしているように見えた。
それだけのことなのに、背中にじわりと嫌な汗が浮かんだ。
私は何も言わず、そっと襖を閉じた。
⸻
次に異変が起きたのは、それから一週間後。
同じく火曜日だった。
その日、吉川さんはニッカ姿で、近所を散歩に出ていた。
私は留守番をしながら、寝室の掃除をしていた。
掃除機をかけ終え、棚の埃を払っていると――
(ドンッ)
突然、背後で鈍い音がした。
振り返ると、棚の上にあったはずの日本人形が、床に落ちていた。
(落ちただけ、か……)
そう自分に言い聞かせ、私は人形を拾い上げた。
その瞬間――
「……え?」
思わず声が漏れた。
人形が、
温かかった。
木や布の冷たさではない。
まるで、生きている人間の体温のような、はっきりとした温もり。
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