奇々怪々 お知らせ

妖怪・風習・伝奇

狐御前さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

禍憑神①
長編 2026/02/05 18:05 351view

 その言葉が耳に刺さった瞬間、頭の中が真っ白になった。
 教授は淡々と、まるで今日の天気でも話すみたいな顔で俺に告げた。
 半年前、俺が犬鳴村の私有地に入り込んだことが、どうやら今になってバレたらしい。
 大学の会議室は重たい空気に包まれていて、俺はただ呆然と座っていることしかできなかった。

 伊藤と斎藤先輩の名前が頭をよぎる。
 どうやら二人は助かったらしい。教授の口ぶりから察するに、奴らは俺を売って自分だけ助かったのだろう。

「俺たちは止めたが、あいつが勝手に入ったんです」

 そんな風に言ったに違いない。
 助けたはずの友達に裏切られるなんて、さすがに想像していなかった。
 俺は信じたくなかった。胸の奥で小さく火花が散るような、なんとも言えない気持ちだった。

 講義棟を出たあと、俺はまっすぐ近くの公園に向かった。
 誰もいないベンチに腰掛け、気がつくと、ぼろぼろ涙がこぼれていた。
 こみ上げる悔しさと悲しさを抑えきれず、うつむいて膝に顔を埋める。

 しばらくそうしていると、不意に後ろからくすくすとした笑い声が聞こえた。
 思わず顔を上げて振り返ると、公園のガードレールの上に少女が座っていた。

 年の頃は十代前半くらい。幼い顔立ちに紅白の巫女服、けれどやけに短いミニスカート。
 アニメでしか見たことがないような格好で、細い脚をぶらぶら揺らしている。
 現実感がなさすぎて、一瞬幻覚かと思った。

「退学させられてかわいそー」

 少女――巫女は、手をパンパンと叩きながら俺をからかうように言った。

 明らかに俺を見下している笑み。
 カチンときたが、ここで子ども相手に怒鳴りつけたら、もう取り返しがつかなくなる。
 俺は見ないふりをして、そそくさとその場を立ち去ろうとした。

 けれど、巫女はまるで磁石に吸い寄せられるように、俺の隣にぴったりとついてくる。
 顔を覗き込んで、にやにやと悪戯っぽく笑う。

「こんな小さな子に言いたい放題言われて悔しくないの~? ざこざぁーこ」

 まったく遠慮というものを知らないらしい。
 無視しようと歩を速めるが、巫女も楽しそうに追いかけてくる。

 そのまま駅まで向かい、俺は改札をICカードで通った。
 ふと後ろを見ると、巫女は何食わぬ顔で改札をすり抜けている。
 切符もカードも使わず、まるで幽霊のように。
 思わず二度見してしまった。

3/5
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。