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妖怪・風習・伝奇

狐御前さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

禍憑神①
長編 2026/02/05 18:05 384view

 周囲を見渡すと、誰一人として彼女に気づいている様子がない。
 こんな派手な格好で浮いてるのに、まるで空気みたいにスルーされている。
 ひょっとして、俺にしか見えてない?

 全身に冷たいものが走る。

「ようやく気付いたんだね。鈍すぎじゃない~?」

 巫女はけらけらと笑いながら言った。

「……あんたいったい何者だ?」

 俺は戸惑いながら声をかける。

「わたしは禍憑き神(まがつきかみ)。この地の禍(わざわい)を吸い取ってきた偉大な神よ。
 気軽に時雨ちゃんって呼んでくれていいわよ~」

 どこか得意げで、年齢不相応な風格があった。
 けれど態度の悪さは変わらない。
 イラッとしながらも、変な神様に逆らったらろくなことがないと、理性が俺を止めた。

「えっと、時雨さん……」
「時雨ちゃん」

 あくまで「ちゃん」付けにこだわるらしい。
 仕方なく訂正する。

「時雨ちゃん。じゃあ、どうして俺の前に現れたんだ?」
「あなたに恩返しをするためよ」
「恩返し……?」

 不思議そうに聞き返すと、時雨ちゃんは小さく首をかしげた。

「半年前、山でお地蔵さんを見なかった? あれは私の分身なの。
 あなたが優しく拭いてくれたから、お礼でもしなきゃなーと思って、こうして顕現したのよ」

 なるほど、そういうことだったのか。
 たまたまタオルで拭いただけだったが、まさかこんな形で返ってくるとは思わなかった。

「じゃあ……大学の退学、取り消してくれない?」

 ほんのわずかな希望を込めて頼んでみる。

「それは無理」

 時雨ちゃんはあっさりと言い放った。

「しょんなぁー……」

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