周囲を見渡すと、誰一人として彼女に気づいている様子がない。
こんな派手な格好で浮いてるのに、まるで空気みたいにスルーされている。
ひょっとして、俺にしか見えてない?
全身に冷たいものが走る。
「ようやく気付いたんだね。鈍すぎじゃない~?」
巫女はけらけらと笑いながら言った。
「……あんたいったい何者だ?」
俺は戸惑いながら声をかける。
「わたしは禍憑き神(まがつきかみ)。この地の禍(わざわい)を吸い取ってきた偉大な神よ。
気軽に時雨ちゃんって呼んでくれていいわよ~」
どこか得意げで、年齢不相応な風格があった。
けれど態度の悪さは変わらない。
イラッとしながらも、変な神様に逆らったらろくなことがないと、理性が俺を止めた。
「えっと、時雨さん……」
「時雨ちゃん」
あくまで「ちゃん」付けにこだわるらしい。
仕方なく訂正する。
「時雨ちゃん。じゃあ、どうして俺の前に現れたんだ?」
「あなたに恩返しをするためよ」
「恩返し……?」
不思議そうに聞き返すと、時雨ちゃんは小さく首をかしげた。
「半年前、山でお地蔵さんを見なかった? あれは私の分身なの。
あなたが優しく拭いてくれたから、お礼でもしなきゃなーと思って、こうして顕現したのよ」
なるほど、そういうことだったのか。
たまたまタオルで拭いただけだったが、まさかこんな形で返ってくるとは思わなかった。
「じゃあ……大学の退学、取り消してくれない?」
ほんのわずかな希望を込めて頼んでみる。
「それは無理」
時雨ちゃんはあっさりと言い放った。
「しょんなぁー……」


























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