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心霊

肺病みさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

展望台
長編 2026/01/04 15:51 1,088view

エリは奥の展示を見に進んだ。
俺は中央の地図を眺める。知床半島がここで…と地図の反対側から細く黒い指の影が伸びた。
身体中が総毛立ち、顔を上げたが誰もいない。
地図に目を落としたが、さっきの黒い指の影もなかった。
「もう出るんですか〜?」
「え…?」
急にエリが声をかけてきて、ふいをつかれたように驚いて言葉が出なかった。
「あれ?入り口にいなかった?」
エリが振り返って問いかける。
「いや、俺も階段を降りてずっとこの地図見てたよ?」
「ふ〜ん、入口の方から視線を感じたからもう帰るのかな〜と思って」

入り口から視線?俺たち以外にこの展示室には誰もいなかったし、誰も入ってきてない。
エリはまた展示の写真に向き返った。
俺も地図を挟んでえりと反対側の展示写真を見た。ピラミッド展望台の創立日などが年表形式で書いてある。落成式の写真があった。
式典に並べられた椅子に当時の市長や関係者が写っている。全員が笑顔の中で、その関係者の右端の人物だけ下を向き俯いているようだった。
年表自体は創立10年、20年の写真は特になく、実にアッサリしたものだった。
展望台といえど、ここでイベントが行われたことはなく、特に地元の憩いの場というわけでもないようだ。

ミシっと背後で音がした。階段を登ってエリが帰ろうとしているのか?
俺は展望台を後にしようと振り返ったが、エリはいなかった。一気に悪寒が走る。
この小さな空間で人が隠れるスペースはない。ましてや、入り口の戸を押した音に気づかないわけがない。
俺も入り口に向かい、外に出ようとした瞬間に違和感を抱いた。
誰かがいる。

地図を挟んで反対側に人の影が地面に伸び、展示の写真に人の形の黒い影が重なっていた。
施設の電灯によって、俺の影が伸びているのだと思った。しかし、手前の地図に落ちている俺の影とはあからさまに違った。
「エリッ!!!」
咄嗟に外にいるであろうエリの名前を呼んだ。
外からエリの反応はないが、黒い影の動きは一瞬止まった。
その隙に俺は地図の反対側の影を避けるように入り口にジリジリと近づく。その時、刺すような俺を見下ろす視線を展示室入り口の階段の上から感じた。
入り口へにじり寄る間、ずっと展示室入り口から視線を感じていた。しかし、地図を挟んで反対側に伸びる暗い影を無視する事はできない。
一方で、視線を感じる方向を確認できない。
その視線を背に感じながら入り口へにじり寄った。影は微動だにしない。
階段を背を向けながら登る。ミシミシと音を立てる。違和感を感じた。俺が階段を登るタイミングとは異なるタイミングでミシッという音が展示室で響く。
その音は階段鳴っていない。むしろ後退りながら階段を登っている、その入り口から聞こえる。
一段、もう一段と展望室の階段を登り、俺はドアに手をかけて体重をかけ開いた。
腰を低くしながら、這い出るように展望室を出た。

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