これはゲームショップの常連さんの一人であるイキリト・ロウから聞いた話だ。ロウは指折りのゲーマーで自宅には大量のゲームソフトとPS2やPSP、セガサターン、ドリームキャスト、XBOXといったゲームハードを所有している方であった。僕はロウから、
「何なら俺がゴールデンウイークに長野県北安曇郡白馬村及び白馬岳で体験した怖い話を教えてやるよ。洒落怖の「自己責任」「山の測量」に似ている個所があるかもしれないけど、そこは目につぶってくれ」
と言ってきた。
それはある年のゴールデンウイーク、ロウがゲームショップの店長と長野県北安曇郡白馬村にある「ペンション・クヌルプ」に泊まった時のことである。勿論、これは店長の提案であった。「クヌルプ」はチュンソフトのサウンドノベルゲーム「かまいたちの夜」の「シュプール」のモデルになったペンションである。もっとも、ロウは「かまいたちの夜」に興味がなく、当時の彼は「爆走デコトラ伝説」「EVE The Lost One」「ダブルキャスト」「蒼天の白き神の座 GREAT PEAK」にハマっていたそうだ。ロウたちは「クヌルプ」でチェックインを済ませると、ロウたちは白馬岳で登山を始めた。店長は
「キミ。いつもテレビゲームばかりしているのに、運動神経いいんだな?」
と笑う。ロウは
「おいおい、俺を舐めちゃ困るよ。こ―見えても、俺は登山とかが好きなんだ。学生時代、マウンテンバイクで舗装されていない山道等を走破したのはいい思い出だよ。それに少し怖い体験したこともあるな。これは夏休みに白馬村近辺の山道をマウンテンバイクで走っている時に寂れた集落と今は廃墟と化したサナトリウムを見つけたんだ。俺はサナトリウムの中に入ってみると、なんと、ホルマリン漬けにされた人間の生首が保管されていたんだよ。その後に寂れた集落に寄ってみたんだが、そこの集落で葬式が行われていたらしいんだ。俺は村人たちに見つからないように葬式を覗いてみた。なんと、亡くなった方は首がなかったんだ。恐らく、村人たちが首を切断して、あのサナトリウムで生首を保管しているんだろう・・・と思った。まぁ、あーゆー奇習はどこにでもあるからね。後日、白馬村の方々に例の集落とサナトリウムの事を聞いて回ったんだけど、みんな「知らぬ、存ぜぬ」を貫きとうしていたわけだが、白馬村の人たちは集落とサナトリウムの事を知っていたんだろな」
と言った。ロウは続けてこういった。
「それにしても、ゴールデンウイークなのか登山客が多いな。特に女性がだ。もしかして今、女性の間で登山ブームなのかな?一昔前はスキーが大ブームだったのにな」
「でも、女性の登山客なんてほとんどが山の事を知らないトーシロな上にインスタ狙いのミーハーばかりじゃないか?」
「だよなぁ~。あいつら、トーシロだから、下手すると遭難しかねんぞ。ま、そこは自己責任なんだけどね、はははッ。それに中国人の観光客もかなり来ているな」
「あの人たち、マナーが悪いからな」
「タイのホテルのバイキングでの話とかだろ?あの中国人たち、白馬村の方々ともめなけゃいいけど・・・」
白馬岳のハイキングコースの終点に来た頃、店長が
「ロウ。いったん引き返すか?」
と言ってきた。ロウは空を見る。天候が悪くなってきたようであった。天気予報では大雨になる可能性が高かった。
「たしかに店長が言うように下山した方がいいな・・・」
ロウはぽつりとつぶやく。ロウたちは下山はすることになった。下山途中、店長は
「ロウ。絶対後ろを振り向くんじゃないぞ」
と言ってきた。ロウは
「何かマズイ物でもいるのかよ?」
という。店長は話す。
「ああ。俺たちの後ろに白いワンピースを着た女性が立っているんだ。女性はこっちを見ている」
「?」
「どう見ても登山しに来た奴の服装じゃない。それにゴールデンウイークの時期に白いワンピースの女がいるなんておかしいだろ?」
「言われてみればそうだな。店長、もしかして幽霊か?」
「いや、幽霊じゃないんだが・・・あ」
「店長どうしたんだよ?」
「先ほどの中国人の観光客が白いワンピースの女性に声をかけている。いいか絶対に振り向くなよ」
「はいはい」
店長は足を止めた。
「どうしたんだよ?」
「なぁ、ロウ。中国人の観光客が何か狼狽しているように思えるんだが・・・」
「そりゃあ、こんな山奥に登山に来たと思えないような白いワンピースの女性がいるからだろ?」
「いや、あの中国人の観光客は白いワンピースの女性を知っているようなそぶりなんだ」
「ふぅん」
話を終えると、ロウたちは下山した。猿倉登山口の駐車場にて、一台のマツダ・グランドファミリアの2ドアクーペが停車していた。グランドファミリアの運転席から
「おーい、スカーレット!」
と男が手を振る。
「お、その声は神崎か?もしかして俺たちのお迎えかい!」
「ああ。スカーレットが今日、白馬村に来るのを「クヌルプ」のオーナーから聞いてな!とりあえず「クヌルプ」まで送るから乗ってくれ!」
ロウたちは神崎が運転するグランドファミリアに乗りこむ。グランドファミリアはそのまま、「クヌルプ」の方に向かった。カーラジオからストロベリー・スウィッチブレイドの「Since Yesterday」が流れる。グランドファミリアは「クヌルプ」に到着した。
























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