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都市伝説

嘘猫さんによる都市伝説にまつわる怖い話の投稿です

幽霊談話 その2
短編 2025/09/07 21:25 1,025view

「おいっす〜。お、何読んでんの?」
「今日、図書室に新刊が来たのよ。数少ない月1の楽しみなの」
「ほんと咲ちゃんは本が好きだよねぇ」

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ここはとある高校の空き教室。時刻は23:00

どこか抜けた所があり、基本ぼんやりしている
女子高生の、楓(かえで)
少し口が悪く、その考え方や行動に時代を感じる女子高生の、舞(まい)
どこか生き辛そうな性格をしているオカルト好きな女子高生の、咲(さき)

この3人は、この学校の他の生徒が帰った後、この教室に勝手に集まりお喋りをする事が日課になっている。
この物語は、この3人のなんてことない日常会話である
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「えぇ。勿論全部の本が好きという訳じゃないけど…本を読んでいる間はその世界にのめり込めるしね」

「あたしは本嫌いだけどな。活字読むと頭痛くなってくるし。んで?今は何読んでんの?」
「これかしら?【時代の変遷に伴う都市伝説と民衆の変化】…まぁ手っ取り早く言えば、その時代に流行った都市伝説の紹介みたいなものよ」
「また難しそうな本読んでんなぁ…あたしが生きていた頃は口裂け女とかが流行してたなぁ。懐かしいぜ」
「あ、わたしも知ってる。凄く昔に存在していた都市伝説だよね。」
「口裂け女…私も本とかネットでしか知らないけれど、当時生活していた人々は本気で恐れていたみたいだから」
「いやマジで怖かったんだぜ。避けるためのおまじないとか覚えていたし…」
「私が面白いと思ったのは、口裂け女という都市伝説が、これだけ広く世の中に浸透したっていう事実に対してよ」
「?どういう事?」
「だって当時は、今の時代みたいにインターネットが無かった訳でしょう?しかも、子供だけじゃなくて大多数の大人まで知っていた。その都市伝説の発祥がどこだったかはさておき、それが全国区まで知れ渡って、口裂け女という都市伝説を成立させた…それって、凄く面白い事だと思わない?」
「言われてみれば…どうやって広まったんだろうね」
「私思うのよ。そういった都市伝説って、一人とか二人じゃ広められないの。娯楽として扱うにも、それを本物だと信じて、色々な人間が拡散してきた事。ネットも無い時代にね。【口裂け女という存在が本当に存在するか】というのは正直私からすればどうでも良くて、そんな嘘か本当かどうか解らない物を大勢の人間が信じて恐れていたという時代があった、という事実が、私は凄く羨ましいの。だって、それって凄く面白い事じゃない?」
「いやいや。面白いか?あたしはめっちゃ怖かったんだけど」
「面白いわよ。今の時代、色々オカルトはあれど、口裂け女程、社会的に恐れられている事例は無いじゃない。もう少し後の時代だと赤マントとか、人面犬みたいな話もあるけれど…これも有名な都市伝説ね。昔は沢山あったみたいだけど…こういう類いの都市伝説は最近聞かないのよ。

今の時代、ネットとかで検索すれば大体なんでも出てくるけれど…最近は陰謀論とか、よく解らない実在する組織の話が多いみたいで、私はあんまり好きじゃないの」
「何が違うんだよ。どっちも同じ、色んな人が信じている都市伝説だろうに」
「…これは私の偏見なのだけど。昔の都市伝説って、【存在するかどうか解らないけれど、もしかしたら存在するかもしれない】という、未知の存在に対する恐怖がメインだったのよ。口裂け女にしろ、赤マントにしろ、【未知の存在に自分が狙われるかもしれないという恐怖】というか。
ほら。人間って基本的に閉じた現実世界を生きている訳じゃない?今でこそインターネットが発達して、世界は広がった訳だけれど、昔はそんなもの無かったから、学校、社会、家庭での生活があって…そこって、本来なら安全な場所のはずなのよ。そこに、未知の存在が侵入してくる恐怖…それが昔の都市伝説の醍醐味だと私は思うの。もしかしたら、そんな存在が自分の身近にいるかもしれない。原初の暗闇を恐れる気持ちというか。そんな気持ちを、その時代を生きていた大多数の人間が持っていたという事でしょう?それこそ大人も子供も関係なく。むしろ、ある種の非日常。未知の存在として楽しんでいた側面もあったと思うのよね」
「ストップストップ。話がややこしいぜ。何が言いたいのか解んなくなるから、もうちょい解りやすく頼むぜ」
「…要は。知らない事、未知への恐怖を、社会全体が楽しんでいた時代があったという事よ。今の時代はネットで検索すればすぐ嘘だと解る様になったし…あとは、嘘だとしてもその嘘を楽しんでいた人間が多かったのではないかしらね。今は嘘や粗探しする人間も多くなったから。昔ほどオカルトは流行らなくなったのかしらね」
「…」
「まぁ私は。もう当時の事は思い出したくないけれど。人間って現実世界の方がよっぽど怖いじゃない。それは昔の時代も同じだと思うけれど、都市伝説って、一種の非日常だと思うの。普段気にしないような、現実とは違う恐怖を感じられる様な。非日常って、日常があってこそじゃない。
だから本来、都市伝説が現実世界の恐怖を上回る事は、あり得ないと思うのよ。だからこそ、その垣根を超えて現実世界を侵食しかけた口裂け女…というか当時のオカルトブームは、本当に羨ましいと思うの」
「まぁさ。…咲も過去に色々あったのは知ってるけど。過ぎ去った過去は帰って来ねえし。今の時代にも楽しい事はあるだろ?それを探してみようぜ」
「そうだよ。昔は昔だし…」
「まぁ。これだけ情報を集めやすくなった現代だからこそ、昔の怪異の情報とかを拾いやすくなったというのはあると思うわ。…近い内に、その話もしようかしら」
「お、もうすぐ朝が来る…話し込んじまったな。そろそろ寝るわ」
「うん。おやすみ」
「私も寝ようかしら。じゃあまた今夜ね」

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