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呪い・祟り

八神のカイさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

甘い水
長編 2025/08/13 15:42 4,032view
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「えっ?麗子さん、なんかめっちゃキレイになってません?!」
「肌ツヤ全然違う!」
皆がもてはやす中、同僚の唯だけが冷静な目を向けていた。
「なにか始めたの?」

それから1週間ごとに《エル・セルジュ》を飲み続けた。
たった数回で、麗子の外見はまるで芸能人のように整い
周囲の視線を集めるようになった。
疑念を持っていた唯は、密かにそのドリンクについて調べ始めた。
ネットで商品名を検索しても、販売元の情報が出てこない。
SNSにも口コミがなく、公式サイトも広告以外は消えていた。
「こんなに効果あるのに、話題になってないなんておかしいよ。」
一方、麗子の欲は止まらなかった。
「1週間なんて待てない。もっと飲んだら、もっと若返るかも。」
注意書きを無視し週に2本、3本と飲み始めた。
1か月が経った頃。
あれほど、ハリのあった肌が再び乾燥し始めた。
目元に小じわが戻り、口角が下がって見える。
焦った麗子は、さらにドリンクを買い足した。
今度は1週間で10本を飲み切った。
しかし効果は現れず、むしろ顔全体に異変が現れ始めた。
皮膚は薄くなり、頬はこけ、笑うと表情が引きつる。
鏡を見るたびに感じる恐怖。
「どうして?なんで?!こんなに飲んでるのに!」
唯が麗子の変化を見て、ついに口火を切った。
「もうやめて!そのドリンク、絶対に普通のものじゃない!」
「やめたらまた老けるのよ!私、戻りたくないの。」
唯の警告にも一切聞く耳を持たず、それから話しかけても

無視されるだけだった。
社内でも、一度はキレイに変身した麗子が
どんどんやつれて老け込んでいく様を見て、ヒソヒソと
噂話が蔓延していた。
実は整形で、その後遺症か何かで失敗したんじゃないか?
など、最初はもてはやしていた社員たちだったが
まるで、腫れ物に触るように、麗子を遠ざけていった。
その間も、唯の調査は進行し、ついに確信にせまる
情報を入手した。
表向きは存在しない会社。
商品の配送元は、地方の廃墟と化した施設。
ネットの、ある掲示板には《エル・セルジュ》を飲んだことで
異変を感じた人たちの、匿名の書き込みがあった。
飲んだ翌日から、夢に同じ女が出てくる。
誰かの声が部屋に響く。
麗子と違うところは、顔の変化以外に
奇妙な夢や、声が聞こえるということ。
そして、唯はある記事にたどり着く。
悪魔崇拝団体が行う、呪術的儀式の中で、若返りを
媒介とした魂の徴収儀式が存在する。
その儀式に使われる媒体、それが《エル・セルジュ》だった。
呪いの仕組みは、服用した者の「美への執着」を利用し
魂を少しづつ吸い取っていく。
それが限界に達すると、身体は急激に老化し
やがて、「供物」として捧げられるという。
唯は、急いで麗子に連絡を取ろうとした。
だが。その日を境に麗子は会社を休み、自宅にも

姿を見せなくなった。
連絡も途絶え、lineも既読にならない。
唯一、麗子の家に残されていたのは、空になった何十本もの小瓶。
それは、呪いの契約がすでに完了していたことを意味していた。
唯は、警察に届け出たが「自主的な失踪の可能性が高い」として
まともに取り合ってもらえなかった。
それから3か月が過ぎた頃。
唯は、テレビのニュースで、ある宗教団体の摘発報道を目にする。
「都内を拠点とする違法団体が、薬事法違反と殺人未遂の
疑いで摘発され・・・」
画面には、顔を隠した被害者たちの映像が一瞬映った。
その中の一人、しわくちゃで骨ばった肌。
どこか異様な表情を浮かべた老婆の姿。
テロップには、こう記されていた。
『被害者:吉田麗子(33歳)』
唯は、目を疑った。
顔も体も、まるで70代の老婆のように変貌していた。
信じられない。でも確かに、あの麗子だった。
「麗子さん・・・」
画面の中の麗子が、ふと、こちらを見た気がした。
その唇が、わずかに動いていた。
「まだ、足りない・・・」
唯はその瞬間、全身に鳥肌が立った。
麗子の目の白目部分が、琥珀色に濁り、黒目は底なし沼のように
真っ黒に淀んでいた。
画面が次のニュースに切り替わっても、唯は
動くことすらできなかった。

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