奇々怪々 お知らせ

心霊

真代さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

バイト先の怪談
長編 2025/07/31 20:27 4,168view
0

「え?なんの事です?」

「怪談だよ。怪談。 お前じゃないって、そう言われ続けて、段々と、お前誰?ってふうになっていく。お前誰?まで言われたやつは、死ぬまで追いかけられるらしいぞ。その女に。1人になると、現れるみたいだ。」

「えっと……まじですか?それ。」

俺は、女にお前誰?って言われたなんて、先輩に話していない。俺が話したのは、女が現れて、体が動かなくなったことだけだ。

「奥さんは旦那を探しているからな。誰かわからないやつでも、旦那って可能性を捨てきれないんだろ。だから、それを確認するために追ってくる。ただ、最後には原爆に焼かれてドロドロになった状態で現れるそうだぞ。」

平然と言い放つ先輩。

「あの……言われたんですけど……お前誰って……」

「ガチ?」

「ガチです。」

はぁ……

ため息をついたかと思うと、使い古したハイブランドのバッグを漁り、これまた古ぼけた木の塊みたいなのを差し出した。

「なんすか?これ。」

「これ持っときゃ大丈夫だ。じゃあな。」

それだけ言って、颯爽と原付で夜闇に消えていった。

ちなみに、本当に何も起こらなかった。

それから、俺はその木の塊を常にカバンに入れている。

先輩はその日以来、バイトに来なくなった。

ま、いつか飛ぶだろうなとは予想していたけど、本当に急だったから、驚いた。

程なくして、俺もバイトを辞めた。

今でも、夜中に起きていると思い出す。

月夜の下、太陽のような笑顔で、飄々と怪談を語る先輩の顔を。

〜続〜

5/5
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。