Aさんはひとりでサーフィンに出かけた
そこは全国からサーファーが集まる有名な場所だ
その夜のこと・・・・
相部屋の座敷で何人ものサーファーが雑魚寝をしている中
Aさんは廊下側の襖の下で、うつらうつらと眠っていた
すると背中の襖がすっと開いた
「おい、いい波来たぜ行こうよ!」
誰を誘っているのかわからないが
その言葉を何度も繰り返す
しつこいなぁ、こんな夜中に誰が行くんだよ、と思った
ところが誰も返事をしないせいか
足元にいる自分に声をかけられている気になってきた
とはいえこっちも疲れていて海に行く気にはなれない
「いや、遠慮しとく」と返事をすると
男は黙って襖を閉めた
しばらくすると、また襖が開いて
「おい、いい波来たぜ、行こうよ!」同じ男だ
「いいって、寝てるから」
すると黙ったまま男は襖を閉めた
さらに遅くなってまた襖が開いた
「いい波来たぜ、行こうよ!」
頭に来た
「うるさいなぁ、夜中だぞ!なんでいい波来たってわかるんだよ」
さすがにこのしつこい奴がどんな男か見てやろうと起き上がりながら振り返った
誰もいない・・・・開け放たれた襖の向こう廊下の方から声がする
「俺、去年、夏、いい波、来たぜ、のまれて、しまった、行こうよ」
廊下の天井の近くにその声を聞いた
静かで小さい声だった・・・・
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