正式には宇津洞(うつぼら)隧道というらしいが、みんなはお化けトンネルと呼ぶ。確かに鬱蒼とした森の中を通るトンネルだが、ただ古いというだけで、道は舗装され、明かりもちゃんと点いており、今でも普通に使われている。調べてみたけど、過去に事故で人が亡くなったとか、呪われているといういわくも見つからなかった。だからこそ、今ではそこがお化けトンネルと呼ばれていることは僕のおかげだと自信を持って言える。
僕がやったのは、トンネルの入り口に花束を置くことだった。別に深い理由はなくて、なんとなく怖い雰囲気が出そうだからそうした。その効果はてきめんで、あの花束は昔そこで亡くなった女性のために供えられているという噂が流れ始めた。するとすぐに、赤い服を着た女性の幽霊を見たとか、トンネルの中で物悲しい泣き声を聞いたとか、いろいろな噂が広がり、そこは心霊スポットとして有名になった。
噂が噂を生んで、心霊スポットがひとりでに作られていくのが面白くて、次に子どもの幽霊の噂を広めようと、犬のぬいぐるみを僕が持って行ったところ、トンネルの前で赤い服の女性が、花束を見下ろして立っていた。
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罰当たりな奴だな