そして私を見てニタリと笑い、音も立てずに歩いて行ってしまった。
教室前方のドアの外を落ち武者が通っただろう時、K先生はチラリとそちらを見ていた。
K先生は学校の先生をしている傍ら、実家のお寺でお坊さんもしているという変わった経歴の先生だ。
K先生の授業はつまらないのだけど、脱線して話してくれるお坊さんとしての体験談は生徒に人気があった。火葬場で幽霊を見た話とか、お葬式の最中に幽霊を見た話とか、霊感があるというような話をよくしていた。
そんなK先生が、落ち武者はいないと言った。
――お願い、いないって言わないでよ。
だってそれは、私が見ていたアレがただの妄想じゃないことを裏付けてしまう。
K先生にも見えていて、私の注意を落ち武者から引き剥がすために「いない」って言ったと分かってしまう。
いないって言われたから、もう私はアレがいる事を理解してしまった。
落ち武者も、私に姿が見えていると知ってしまっただろう。
これから卒業するまで、私はあの落ち武者に付け狙われるのだろうか?
学校というのは、ある意味で閉鎖環境だ――つまり、逃げ場がない。
あぁ、K先生が「いない」って言ったから。
私の恐怖の日々が始まってしまった。
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