これは会社の先輩から聞いた話。
先輩の親戚で及川さんという方がいて、その及川さんが他の親戚の方にある話をしたという。
「朝、起きると妻と子供がいない時があるんだ。けど、仕事から帰ってくると2人共いる。そんなことが月に何度かあるんだ」と。
及川さんは特に気にせず生活を送り続けているという。
その話を聞いた親戚が先輩の両親に相談してきた。
「及川のおじさんが、そんなこと言って…どうすればいいかなと迷っている。」と相談されて両親は神妙な雰囲気になってたそうだ。
その話を聞いた先輩は両親に、
「たまたま、朝早く出かけてるとかじゃないの?」と聞いた。
「いや、そんなはずない。お前は小さかったから覚えてないと思うが、及川のとこの妻と子供は何年も前に事故で亡くなってる。」
「えっ?どういうこと?」
詳しく聞くと、先輩が幼い頃に及川さんの妻と子供は交通事故で亡くなったという。先輩達もその時は葬儀とかに参列したそうだ。
「じょあ、いない人を今でもいると思ってるってこと?」
「おそらくな。及川の家はかなりウチと離れてるから何年も会ってない。今はそんなことになってるなんて…」
事故のショックで現実を受け入れられず、おかしくなってしまったのか。と先輩は思った。
それから数ヶ月後、また先輩の家に連絡があった。
及川さんのことをどうにかしようと周りの親族達が色々考えて、本人に電話をした人が何人かいたという。
しかし、その度に、及川さんは、
「はぁ?何、言ってんだ!テメェ!」
「意味わかんないこと言うな!」
「今からお前のとこに行くからな!」
とブチ切れるという。
さすがにそれを言われると親族といえどビビってしまうだろう。
そして、中には実際に会いに行った方がいた。
及川さんの自宅を訪ねると、及川さんはニコニコしながら家の中に招いてくれた。
茶の間に通されると、テーブルには湯呑みが3つあり、座布団も3つ敷かれていたという。
訪れた親族の方は思い切って、妻と子供は亡くなったんだと及川さんに伝えたが本人は笑って、「何言ってるんですか笑。なぁ?2人とも目の前にいるじゃないですか笑」と全く話が通じなくて、怖くなり親族の人は帰宅したそうだ。
数ヶ月の間にそんなことがあったと先輩の両親に連絡がきて、先輩も両親からその話を聞かされた。
「怖いというか、切ないというか…」
先輩はそう言い残し、部屋に戻った。
それから数ヶ月後。
及川さんが亡くなったという連絡がきた。
自宅で亡くなっていたという。
亡くなる数日前にある親族へ連絡していたらしく、
「妻と子供がいなくなった。ずっといない。あの2人がいないなんて考えられない…それにもう疲れた。」と。





















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