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不思議体験

たちさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

お迎え
短編 2025/06/01 00:19 3,238view
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10数年ぶりに帰省した私は変わりゆく街並みを眺めながら散歩をしていた。
変わらない風景もあり、昔のことを思い出しながらゆっくりと歩いていると後方から車が来たので道路の端に寄けていると、車は通り過ぎて数メートル先で停車した。
停車した車はタクシーだったので近所の人が呼んだのだろうと思っていると、
「小林か?」
と私に運転手が声をかけてきた。
「え?ああ…ん?菊池か?」
よく見ると中学の同級生で私に気付き声をかけてきた。
「久しぶりだなー。同窓会以来か。こっちに帰ってきてたんだな。」
「そうだな。タクシーの運転手してたんだな。」
と会話をしていると無線から連絡があったようで、
「今夜、仕事終わったら飲まないか?」と誘われたので承諾し後で合流することになった。
「ちょうど、今夜暇だし…こっちの話でも色々聞いてみるか。」と思い楽しみにしていた。

数時間後、菊池と合流し居酒屋に入り、昔話や近況を話したりしてそれなりに楽しかった。
「そうだ。実はさ、妻の影響で怪談話好きになってさ。タクシー運転手って結構怪談話の時に出てくるんだけど、体験したこととか、聞いた話とかないかな?」
菊池はビールを飲みながらしばらく黙り込み考えているようだった。
「悪い。悪い!変なこと聞いちゃったな…気にしないでくれ!」と伝えると、
「いや!全然大丈夫!結構聞くよな。乗せた人が幽霊だったとか。行き先が変な場所とか。夜遅くまで仕事してるからそういう体験する人はいるみたいだ。」
菊池は話を続け、
「俺自身、あまり体験したことはないけど唯一あったのが…」
「えっ?あるの?」
「ああ、あまり怖くないけど。やっぱりさ、遅い時間帯にそこに人がいるの?ってとこあるだろう。そういうのを見たってくらいかな…
2時過ぎくらいに帰ろうとしたら女性が立っていて手を少しだけ上げてたんだ。顔は下を向いて見えなかった。黒っぽいワンピースを着ていて、髪は長め、色白のひょろっとした女性。一目で、あっ!これはヤバいって感じたから気づかないふりをしてスルーしたんだ。バックミラーで後方を確認すると俺が通り過ぎた後も手を上げ続けていて気味悪かった。そして、5分くらい走ってまた人が立っていてよくよく見るとさっき通り過ぎた女性だったんだ。顔は下を向いて、手を少しだけ上げて。だけど、今後はさっきより少し道路寄りに立っていた。俺は女性の方を見ないようにして通り過ぎた。早く帰ろうと思って走っているとすぐにまた女性が現れたんだ。今にも道路に出てくらいまでの位置で手を上げてた。俺は急いで帰宅した。家に着いて車を停めて降りようとした時前方に何かうっすらと見えたから車のライトをつけたんだ。そしたら、あの女性が手を上げて立っていた。驚いてる俺に、

どうして?

と言って消えたんだ。

「え?めちゃくちゃ怖いじゃんか!どうして乗せてくれないのってことで付いてきたのかな。怖いな…」
話を聞いて怖がってる俺をよそに菊池は静かに酒を飲んでいた。
その後、少し飲んでから軽く挨拶をしてからそれぞれ帰宅した。
「運転、気をつけろよ!また帰ってきた時に飲もうな。」
「ああ。安全運転しないと食って行けないからな笑気をつけるわ!またな。」

1ヶ月後、菊池から電話があった。
珍しいなと思い、電話に出ると、
「よお!お疲れ様!今、大丈夫か?」
「お疲れ様!大丈夫だけど、どうした?」
「いや、たいした用事じゃないんだ。ただ、こないだまた心霊体験したからさまた今度話を聞かせてやろうと思ってな。」
「え?大丈夫だったのかよ?近々、帰る予定ないけどそっちに帰ることあったら連絡するよ!」
「大丈夫。じゃあ、その時にな。楽しみにしてる。」そう言い残し菊池は電話を切った。

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コメント(1)
  • 怖い

    2025/06/01/16:48

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