引っ越してきたばかりの新しい家は、古びた雰囲気が漂っていた。広い庭に囲まれた家で、外見は少し古いが、どこか温かみを感じる。しかし、屋根裏に上がるための階段だけは、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。
「屋根裏なんて、誰も使わないんだろうな」
私がそう言っても、妻は「でも、何か面白いものが見つかるかもしれないわよ」と言って、興味津々で屋根裏へと足を踏み入れた。その言葉が不安を感じさせたが、二人で荷物を整理しながら、屋根裏へのことなどすっかり忘れていた。
数日後、妻が屋根裏で何かを見つけたと言って、私を呼びに来た。彼女の顔には驚きと興奮が交じったような表情が浮かんでいた。
「見て、これ!」
屋根裏に上がってみると、そこには一体の古びた人形が、埃だらけの棚の上に座っていた。人形の目は不自然に大きく、微笑みを浮かべているものの、その表情はどこか不気味で、ただの飾りとして見過ごせない何かを感じさせた。
「こんなに古い人形が、ここに放置されていたんだね。」
私はそれを手に取ってみたが、触れた瞬間、冷たい感触が指に伝わり、思わず手を引っ込めた。その冷たさは、まるで何か生き物のようだった。妻はそのまま人形を大切に持ち帰り、リビングに飾ることにした。
それから日が経つにつれ、奇妙なことが次々に起こり始めた。夜中に誰もいないはずのリビングで、足音が聞こえる。部屋の温度が急に冷え込むことが増え、何よりも、人形の目が、まるで私たちを見ているかのように動いているように感じることがあった。
「気のせいだよ、きっと。」私は最初、そう思い込もうとした。
しかし、次第にそれは無視できないほどはっきりとした現象となった。ある晩、眠れずに目を覚ますと、人形が目の前に立っているのを見た。その手には何も持っていなかったが、顔は以前とは違って、明らかに笑っていた。
「お前を…呪ってやる。」
その声が、はっきりと耳の中で響いた。誰の声か分からない。だが、私はそれが人形から発せられたものだと確信した。その瞬間、冷たい手が私の腕をつかみ、恐怖で目を見開いた。
翌朝、リビングに戻ると、人形は元の場所に戻されていたが、その周りには見たこともない血のようなものが散らばっていた。床に落ちた一枚の古びた紙には、かすれた文字で「逃げられない」とだけ書かれていた。
私たちは急いで家を出る決意をしたが、引っ越しの準備をしている間も、あの人形が常に私たちを見ているような気がしてならなかった。最後に家を離れる前に、私がその人形を屋根裏に戻そうとした瞬間、背後で重たいドアがバタンと音を立てて閉まった。
振り向くと、人形は屋根裏の一番奥に立っていた。その顔は、今まで見たことがないほど歪んでおり、目は無数のひび割れで崩れていた。そして、再び、耳元で囁かれた。
「逃げられない…」
その後、私たちは家を出たが、あの人形の呪いが終わったとは思えなかった。どこかで、まだ私たちを見守っているような気がしてならない。どんな場所にいても、目の前にその人形の影がちらつく。
そして、最後に気づいたことがある。それは、家を離れた私たちの背後で、いつの間にか人形がまたどこかに現れることだった。それはもう、私たちの目の前ではなく、どこかの「屋根裏」で…。























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