「わからない。でも……ずっと”見られてる”気がするの」
彼女の言葉に、ゾクリとした。
そう言われると、リビングの隅が、やけに”暗く”見える。
誰もいないはずなのに、そこに”誰かがいるような”気がしてならなかった。
***
それから数日間、俺たちは部屋の隅々まで確認した。
収納の中、クローゼットの奥、ベッドの下。
“何も”見つからなかった。
でも――
やっぱり何かが”おかしい”。
気づけば、彼女は以前より無口になっていた。
家の中では、ほとんど俺の後ろをついてくるようになった。
テレビを観ていても、食事をしていても、どこか落ち着かない。
そして、ある夜。
寝室で横になっていた俺は、ふと目を覚ました。
暗い天井を見上げる。
隣では、彼女がすうすうと寝息を立てていた。
(……なんで起きたんだろ)
理由もなく、ふと目が覚めた。
そんなことは、誰にでもある。
……でも。
何かが”おかしい”。
感覚でしかない。
何が”おかしい”のか、わからない。
息をひそめ、部屋の空気を探る。
(……あれ?)
違和感の正体に気づいた。
“寝息の音が、ひとつ多い”。
俺と彼女、二人分の寝息じゃない。
もうひとつ――”どこかで誰かが息をしている”音が、微かに聞こえる。
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