(……え?)
布団の中で硬直する。
気のせいだ。
そう思い込もうとした。
でも、聞こえてしまった。
“その息”が、少しずつ、近づいてきている。
顔が動かせない。
寝返りを打つふりをして、そっと視線を向けた。
暗闇の中、ぼんやりとした”人影”が見えた。
ベッドのすぐ横。
“何か”が、俺たちを覗き込んでいた。
気がついた瞬間――”それ”は、ゆっくりと後ろへ下がった。
そして、壁の暗がりに溶けるようにして、消えた。
***
次の朝。
俺は彼女に話すべきか迷った。
でも、彼女は俺が何も言う前に、そっと呟いた。
「……見たんだね」
俺は息をのんだ。
彼女は静かに言った。
「ねえ。もう”気にしない”ようにしない?」
「……え?」
「私、気づいたんだ。あれ、たぶん”ずっと”いたの」
「……」
「前からいた。でも、私たちが意識しなかっただけ」
そう言われると、妙に納得してしまう自分がいた。
ずっと生活の中にあった違和感。
俺たちがそれを意識した瞬間、”それ”は、はっきりと見えるようになった。
なら――
気にしなければ、”また見えなくなる”。
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