階段を降りると、地下は異様な空間だった。
本が散乱し、壁には何かが引っ掻いたような跡が無数にある。
鼻をつくカビ臭さに混じって、妙な鉄臭い匂いも漂っていた。
「なんだよこれ……」
中村が足元の本を拾い上げた。
そこにはびっしりと何かの名前が書かれている。
「これ、人の名前か?」
すると突然、奥の方から**ガタッ……**と音がした。
二人は凍りついた。
誰かいる……?
「おい、もう帰ろうぜ……」
翔太が中村の手を引っ張ろうとした、その時――
バタバタバタバタ!!!
本棚が勝手に倒れた。
しかも、何かが這いずるような音が響く。
「……タスケテ」
声が聞こえた。
だが、それは……
「タスケテ」ではなく、「タスケテ……イタダケマスカ?」
翔太はもう耐えられなかった。
「逃げるぞ!!」と叫び、必死に階段を駆け上がる。
だが、中村は動けずにいた。
「お、おい……翔太……後ろ……」
震える声に、翔太は振り向けなかった。
ただ、何かがそこにいるのは分かった。
異様に長い腕、爛れた顔、歪んだ笑み。
翔太は叫びながら、中村の腕を掴み、力いっぱい引っ張った。
そして――ギィィ……バタン!!
扉を閉め、二人は必死で逃げ出した。
翌朝、恐る恐る図書館に行ってみたが、地下の扉はしっかり閉ざされ、鍵もかかっていた。
職員に聞いても、「そんなことがあるはずがない」と笑われるだけだった。
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