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呪い・祟り

メントスコーラさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

廃ホテル
長編 2025/01/24 12:29 9,432view
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「おい田村!帰るぞ!!」
再び叫んだが、田村の返答はない。
「田村!!マジで置いていくぞ!!」
いちばん手前の客室のドアを開ける。
後ろ向きで立つ男の姿が目に入りドキッとしたが、よく見るとそれは田村だった。
「田村!お前なんで……」
近づいて思わず声を上げる。
そこにいたのは確かに田村だったが、俺の知っている田村じゃなかった。
異常なほど口角を上げ、目を見開き、眼球を忙しく動かしながら唾液を吹き出している。
下半身はびしょびしょに濡れていた。
おそらく失禁したのだろう。
「田村、田村お前どうしたんだよ!」
思いっきり頬を叩くと田村の身体が人形のように硬直したまま床に倒れた。

その衝撃で我に返ったらしい田村が、俺を見てしがみついてきた。
「た、助けて、助けてくれ!早くここを出て、出よう……!!」
今までに見たことがない田村の泣き顔。
「わ、わかった、わかったから!早く帰ろう!」

田村を抱えるようにして部屋を出たその時、背後からミシミシッと音がした。
振り向くべきではなかったが、俺は思わず振り向いてしまった。

「……!!!!」

目を見開き、口角を上げた長い髪の女がそこにいた。
口からは血が噴き出しており、下半身は蛇のような形状でぬらりと光っていた。

「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

こだまする女の笑い声。
俺と田村は悲鳴にならない悲鳴を上げながら階段を駆け下り、ホテルの外に飛び出した。

「おい、大丈夫かよ!」

青山に引っ叩かれ目を覚ます。
青山と島田、林が心配そうに俺達を見ていた。
全く記憶に無かったが、俺と田村はホテルから出た瞬間に気を失い、そのまま青山の家に運ばれていたらしい。
「お前、林から着信あっただろ?なんですぐ出てこなかったんだよ」
「え?着信?」
携帯を確認したが、林からの着信履歴はない。しかし青山の話によると、青山達がホテルを出てからすぐに、林が俺と田村に電話をかけたのだという。
「ホテルの中にいた時は見えなかったけど外に出たら見えちゃったんだ。ホテルに、大きい黒い蛇みたいなのが巻き付いてるのが……」
真っ青な顔で林が言うと、島田も頷いた。
「俺も、姿は見えなかったけどホテルの敷地内に入った段階で変な感じがしたんだ。何か大きいものにずっと睨まれてるような……だから林に霊が見えないか確認したんだ」
俺は三階の客室で見たものを思い出した。
「そうだ、田村はまだ目を覚ましてないのか!?」
田村は俺の隣に寝かされている。
「お前と同じように引っ叩いたりしたんだけど起きないんだよ……」
島田が暗い顔で呟いた。

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コメント(4)
  • こわいこわい

    2025/01/24/17:00
  • こわい

    2025/01/30/13:01
  • マーマー怖いな

    2025/01/31/13:59
  • こわいな

    2025/02/12/16:33

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