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心霊

トマト鍋さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

エキストラのバイト
短編 2025/01/22 15:51 246view

私が学生時代に体験した話です。

学生時代、友達に誘われてエキストラのバイトをやっていました。
いわゆる登録制のバイトで、エキストラの募集があった時に自分が行けそうなら応募して…という感じです。

ある時、近所で映画のエキストラの募集がありました。
映画やドラマは場所が行きづらい上に拘束時間が長いことが多く、今までなんとなく避けていました。
しかし今回の募集では拘束時間も短く、通常は出ない交通費と昼食まで出してくれるというのです。
これは行くしかないと、友達のMを誘って参加することにしました。

集合場所は千葉のK駅でした。
駅前には同じくエキストラと思われる方がいましたが、私とMを含めて計6人とかなり少人数でした。
ちなみにこの時点で映画の詳細は聞かされていません。
なので皆で「どんな映画だろうね?」と話していました。
やがてワゴン車が到着し、私達はその車に乗り込みました。

送迎がある現場なんてはじめてだったので少し感動しました。

しかしこの車、外が見えないように窓に黒いフィルムが貼られているのが印象的でした。
途中、高速道路に入りそこからも随分と長い距離を移動しましたが、車内は和気藹々としていたので退屈せずに済みました。
運転手と助手?らしき人はずっと二人で何か喋っていました。

そうこうしているうちにワゴン車が目的地に到着しました。
それは鬱蒼とした森の中にある廃病院で、既にカメラマンらしき人と監督、そして演者と思われる方が複数人待機していました。
「君たちエキストラにやってもらうのは本当に楽な仕事だから」
監督はそう言って、私たちに白いレインコートのようなものを渡しました。
そして、それを着て指示された部屋の中で一人ずつ待機してほしいと言われました。
「順番に、俳優さんがドアを開けていきます。が、特に何も演技する必要はありません。俳優が立ち去ったら仕事は終了なので、あとはスタッフが呼びに来るまで待っていてください」
要は、幽霊の役らしいです。
その後は簡単な仕事の説明と俳優、スタッフの紹介があり、すぐに持ち場へ移動となりました。

私の待機場は2階の個室でした。
正直、一人で廃墟の中で待機なんて嫌でしたが、隣の部屋にはMがいるので多少の安心感はありました。
ちなみにこの映画の監督は短編ホラーを自主制作し、動画サイトなどで公開しているようでした。
今回は廃墟をテーマにしたホラーで、小さい映画館で上映する予定だと嬉しそうに話していました。

部屋の中の、指定された位置(窓の前)に立ち、俳優さんがドアを開けに来るまでぼーっとしていると、誰かがガチャとドアを開けました。
しかしそれは俳優さんではありません。
異様に髪が長くボサボサで、両手両足がアザだらけの、薄汚れたキャミワンピのようなものを着た女性でした。
私は「霊役の人かな?」と思いましたが、さっき出演者とスタッフの紹介をされた時にこんな人はいませんでした。
そもそも幽霊役の人が途中で入ってくるとも聞いていません。
その女性は私を見るなり、異様なものを見たとでも言いたげな表情で目をギョロギョロさせ、ゆっくりとした動作で立ち去っていきました。
それから間を置かずに、一階から誰かの叫び声が聞こえました。
私はそれを撮影上の演出だと思って気にしないでいたのですが、やがて建物内が慌ただしくなり、スタッフの方が息を切らせて
「すみません、撮影は中止です!外に出てください」
と言いに来て、はじめてイレギュラーなことが起こったのだと理解しました。

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