ある日の夢
投稿者:とし (2)
私はある日夢を見た。
電車に轢かれる夢だ。突き飛ばされ、電車に轢かれる夢。その夢は夢にしては妙にリアルだった。身体を引き裂かれる痛みも感じるし、身体がバラバラになっていく感覚もあった。苦しい。ただ夢だからだろうか、その後の事も詳しく見れた。突然の飛び込みに狼狽している人。気分が悪くなりその場に伏せる人。涙を流す人。私の遺体を掃除する人。など色々みれた。そこで夢は終了し、私は目を覚ました。寝起き最悪の夢だったが、同時に夢であったことに心底安堵する。強烈な夢だったが所詮は夢、数日もすれば次第に記憶から消え去っていた。
そこから10日程したある日。私は仕事に向かうためいつものように駅のホームにいた。その日は天気も気温も良く夢見心地な気分だった。すると聞き慣れたアナウンスが流れる。「まもなく○番線に列車が参ります。危ないですから黄色い線の…」その直後だ。私の隣の人が大笑いを始めた。ものすごく楽しそうな笑い声だ。あまりの大笑いだから、朝からそんなに面白いことがあったのか?と思わずチラッと横を見た。
その直後、私は後ろから突き飛ばされた。宙に浮いた私はそこでこの間の夢を思い出した。そこからは夢と全く同じことが起きた。身体を引き裂かれる強い痛み、徐々に身体がバラバラになっていく感覚。一瞬の出来事が無限に感じられる。苦しい。
「どうかこの事も夢であってくれ…」そう強く願った。
だが、私は覚めなかった。
数日後、犯人は捕まった。60代のおじいさんだった。おじいさんは「ギャンブルで負けてイライラしていたら、朝から楽しそうに笑ってる連中の姿に神経を逆撫でされ、鬱憤晴らしに八つ当たりした。」そう述べた。
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