雲の隙間から巨大な人の手が伸びてきたのだ。
きっとこれも俺達見える側の人間にしか見えない物なのは明白だが。
その腕は巨大オケラを鷲掴みにするとギリギリと強く握って締め上げる。
巨大オケラが苦しそうに天を仰いでいる。
すると今度は雲の隙間から人の顎のようなものが出てきた。
目は見えないが鼻辺りまで出ている、おじさんの顎としか言い表せない物だった。
オケラを鷲掴みにした腕がその顎に伸びていく。
おじさんの顎らしきそれは『ぐぁぁあ』とヨダレまみれの口を開くとおもむろに巨大オケラを咥えた。
グチャグチャグチャァと音は聞こえてないがまさにそういう擬音がピッタリといえる捕食風景だった。
俺らが数日観察し続けた巨大オケラはその唐突に現れた謎の巨人に食われてしまった。
口の中のオケラを嚥下したのか若干見える喉元がゴクリと動くとそれは雲の中へと姿を消してしまった。
俺たちはただただその超自然的オカルト現象を見ている事しか出来なかったのだ。
俺はそんな光景を見ながら一つの仮説を脳内で立てていた。
伝承に残る山々や湖を作り上げ、国づくりの神として伝えられる事となったダイダラボッチ。
その神のみわざとも言える事象をやってのけたのは確かにあの巨大オケラだったのかも知れない。
きっと現代に俺らのような見える側の人間が居るように、大昔にも、きっと見える側の人間が居てその人たちが実際にその現象を観測し、伝承書物などに書き記したのだろう。
しかし、ここで歴史の齟齬が産まれる。
国づくりをしたのはオケラであったが、それを伝承に残した人たちが目にしたのはあのオケラを捕食してしまった謎の巨人の方だったのでは無いだろうか。
そして伝承にはダイダラボッチは人の形をした巨人として残されたのではないかと。
結果として現代ではダイダラボッチといえば人の形をした巨人という解釈が広まったのではないかと。
ならあの巨人は一体なんなんだという話になってしまうのだが。
真実は既に歴史の闇の中だ。
それを知る術は俺には無い。
そんな結論に至ると俺は横の鎖を見やった。
鎖はと言うと特段驚いているようでもなく、ただただ何も無くなったビルの側面を冷たい目で見ていた。
鎖は、アレが羽化する事も、捕食される事もまるで最初から知っていたようだった。
この女は一体いつから最後はこうなると分かっていたのだろうか、そしてどこまでを知っているのだろうか。
直接聞く気にはなれない、どうせ教えてくれないから、いつもそうだし。
そんな底の知れない女と俺は常に行動を共にしている訳だが、いつかはこの女と同じ目線で物事を見れる日が俺にも来るのだろうかと。
























けっこうこわかったです。
さすがに44Pもあると途中で挫折しました。
ぜひ今度5Pくらいの短縮版を書いてください。
怖くはない。だが悪くはない。
しんれいかいきみすてりーふうの、とあるぼうけんたん、ちょうへん。
主人公が俺っ娘だとは、ある一節まできがつかなかった 。
いつも空いている席の正体に続く、二作品目読ませていただきました。ジャンルとしては、心霊というより田舎・伝承系でしょうか。
師匠シリーズ、なつのさんシリーズのように登場人物に統一性があり、続編小説を読んでいるようでとても面白いし、なるほど、と思える話でした。次の話も楽しみにしています。
一作品目の話と、こちらの話は、朗読させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
俺は高2なのに1コ上の石野さん大学生なんです?