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心霊

琥珀さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

戦火
長編 2021/03/18 15:44 9,425view
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帰りに送ってもらうのも嫌だったので、
自分の車で後ろからついて行く旨を伝えると、
乗れと言わんばかりに助手席のドアが開けっ放し。本人は運転席に座って前を向いたまま無言。
私も大人しい性格では無いのですが、
普段は礼儀正しい同僚なので黙って車に乗りました。

家は近くにあり、なんて事ない普通の賃貸マンション。家に入ると、膝の上で幼子を寝かしている嫁さんがいました。
部屋は綺麗に整頓されていて、一見幸せそうな家庭です。

お茶を出されるかと思ったのですが、
嫁さんが出してくれたのは「オリオンビール」でした。
ビールに戸惑っていると、

嫁さんが小さな声で
「バカバカしくて、お酒を飲まないと聞けないと思うから…」って力無く笑うんです。

私が同僚に「どういう事?」と聞くと、
同僚「他に人がいないと話したく無いって言うんです」
私「??何を?」
同僚「嫁さんが一週間寝てない理由です」
私「は?一週間?」
同僚「さぁ!連れて来たぞ!話せ!」
私「まぁ 落ち着けって」

嫁さん半ニヤケ小声で

「寝るとね…大勢の人達が叫びながら逃げ回る音が聞こえるんです…」
「10人とかそんなレベルじゃなくて、何百人も…大人も子供も女の人も、沖縄の方言で叫びながら…」
「私…まともに沖縄な方言なんて聞いた事ないけど、多分方言」

同僚「どこで…?」
嫁さん「わからない…頭の中?…外?…寝ると聞こえるから…」なんかフラフラしながら話す。

嫁さん「それで、毎晩音が聞こえて飛び起きるとベッドの隣にこの子がいないの…」
嫁さん「そしたらね…ベッドから抜け出してリビングの窓に向かって土下座しながら合掌してるんです…」
私「え?2歳でしょ?」
嫁さん「でも…ほんとの事だから…」

その晩は私も同僚の家に泊まる事になりました。同僚と私は寝ないで見守っていましたが、嫁さんは男2人がいると安心したのか寝息をたてて寝ています。特に変わった様子も無く翌朝を迎え、気まづそうな嫁さんに見送られて2人で出勤しました、同僚は疲れ果てていたのと、どうしたらいいかわからず、目を真っ赤にして終始無言でした。

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コメント(1)
  • 私は沖縄出身のものです。
    宜野湾は地元ではないのですが、小さいころに祖父母から宜野湾周辺の惨状をよく聞きました。
    その時に感じていた、怖い感覚というのをこの話で久々に思い出しました。
    この夏は地元に帰る予定なので、その際には宜野湾にも立ち寄り、手を合わせていこうと思います。

    2021/04/07/15:52

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