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不思議体験

ぴこぴこさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

秘密基地がみつからない
短編 2024/09/05 02:46 1,133view

小学生低学年のころ住んでいた場所はド田舎だった。
まわりは森で家も20軒ほど、どうしようもないクソ田舎だった。
遊ぶ場所なんてもちろんなく道路で遊ぶか、近所の神社に集まって遊んでいた。

きっかけは何だったか、あるとき秘密基地を見つけたと仲間の一人が言い出した。
神社から森に入っていった少し先に建物があるというのだ。
子供だった私たちは娯楽に飢えていて、森の中に建物があるなんて恰好の餌にしかならず、皆大喜びでその子に案内についていった。

その建物はコンクリートブロックで出来た小さな小屋のような建物だった。
扉は鉄でできていて硬く閉ざされていて、子供だった私たちではびくともしなかった。
その時、仲間の一人がボソッとつぶやいた

「……これ、火葬場だよ。」

親がそんなことを言っていた、大昔は使われていたが今は使われていない、みたいな話を聞いたことがあるという。
それまでのウキウキとした空気が一気に冷え、その場所が急に恐ろしい場所に感じ鳥肌が立つのを感じた。
そして、誰からというわけでもなく皆我先にとその場所を後にした。

その後、その秘密基地は子供たちの間で度胸試しのような場所になり、こっそりと見に行っては帰ってくるという場所になった。ただそれだけの話だ。

それから数年後、私は親の仕事の都合で別の県へと引っ越すことになった。
祖父母はその地に残り、私と両親が引っ越すかたちになった。
それからさらに時が過ぎ、私が高校3年生になった夏、祖父が亡くなった。
私と両親は祖父母の家に帰省し、通夜も葬儀も問題なく終わったその翌日、時間の空いた私は久しぶりに近所を見て回ることにした。
とはいえ家も20軒ほどしかないド田舎だ、すぐに村を一周し最後に私は神社へと足を運んだ。
そこでふと、秘密基地を思い出した。

(森の中とはいえ小学生でもすぐにたどり着ける場所にあったんだ、すぐ見つかるだろう。)
そう思っていたのに見つからない。少しむきになって探してみるがやはり見つからない。
とはいえあまり長い時間探すほどの時間もない。
しょうがなく諦めて家に戻った私は、両親にその話をした。
昔子供たちの間で秘密基地と呼ばれていた場所がみつからないと。

「そんな場所に、そんな建物あったかなぁ…」

両親曰く、この村に火葬場なんてないし、ましてや森の中のそんな場所に建物なんて無いと。
私や友達が子供のころ遊んだあの秘密基地はいったい何処へ消えてしまったのか。
確かにあったはずなのに。
秘密基地がみつからないんだ。

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