成仏できない程の親子愛
投稿者:細雪 (8)
私の住んでいる町にはコンビニとコンビニ跡が道路を挟んで向かい合っている交差点があります。
少なくとも大学進学を機に町へ越してきた3年前には、既にコンビニ跡の空きテナントが売りに出されており、初めて見た時に、ボロボロの外観に加えて、全てのガラスが内側から隙間なく板で打ち付けられていることに驚いたことを覚えています。
住宅街にあり立地も悪くないため、コンビニ跡地が取り壊されないで利用者募集のままであることを不思議に思っていました。
しばらくして、ふと知り合いとの雑談で、そのコンビニ跡地のことを聞いてみたところ、そこは幽霊がでるということを教えてくれました。気になったので同じ町に昔から住んでいる親戚に聞いてみたところ、そこでアルバイトをしていた友達がいたそうで、詳しい事情を知っていました。いつまでも取り壊さないコンビニ跡の裏には悲しい事故があったということがわかりました。
十年程前の雨の降った冬の夕暮れ時のことですが、横断歩道を渡っている母と幼い娘に信号無視した車が突っ込むという事故がおきました。娘は衝撃でコンビニの中まで飛ばされ、母親は横断歩道に倒れたまま、身動きがほぼ取れない状態で娘を探してもがいていたそうです。二人とも少しの間は息があったようでしたが間もなく、亡くなってしまったという悲惨な事件でした。
しばらくして、コンビニは閉店したそうです。ですが、その理由に先ほどの事故は関係なく、元から移転する予定があってのようです。
そしてここからが怪談話なのですが、閉店からしばらくして、コンビニの店内で小さい女の子の幽霊がでてくるようになったそうです。
霊感のある人は、事故の日と同じように雨の降った日は暗くなると、電気のついていない店内から横断歩道の方を見て泣き叫ぶ女の子が見えるそうです。
きっと母親を探して泣いているのだと思いましたが、地元に伝わっている噂はもっと可哀想なものでした。
女の子だけでなく母親も幽霊になって事故現場に留まってるらしく、さらに母親は横断歩道で身動きがとれない状態のようです。実際に轢かれている訳ではないですが小さい女の子からしたら、幽霊の母親に対して道行く車が通り過ぎていく光景はかなり辛いと思います。事故がフラッシュバックするだけでなく、コンビニ跡からでて、母親の元に駆け寄ることもできない女の子の気持ちをを想像すると胸が詰まります。
理由はわかりませんが、反対側に新しいコンビニができてからは、そこの店員や本の立ち読みをするお客さんからの親子の幽霊の目撃談が止まらなくなったそうです。みんなが口を揃えて「もうみたくない、辛い、可哀想」と訴えたようで、その光景はかなり悲惨だったのだと思います。そういったことが続き、アルバイト店員の退職が立て続き、お客さんも減っていった程です。
コンビニも困ってしまい、とうとうお祓いをすることにしたらしいのですが、神主からは「親子のお互いを想う念が強すぎて成仏させられない」と言われたそうです。
色々と検討した結果、お互いが見えているから成仏できずに留まってしまっているならばと、向かいのコンビニ跡のガラスを板で内側から塞ぐことにしたようです。親子を引き剥がすようで心苦しいですが、板で塞いでからは、次第に母親の霊の目撃談は減っていき、今では心霊スポットという認識も薄れたようです。実際に、私もこの話を聞くまではそんなこと思ったこともありませんでした。
私は二人が無事に成仏したことを祈っています。
そして、この話を読んだ皆様もそう祈ってくれることを信じています。
成仏できると良いですね。
成仏させてあげて下さい。