霞がかった夢
投稿者:ナナカマド (3)
短編
2023/09/11
16:04
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きっと最後に挨拶に来てくれたんだと母は涙ながらに喜んでおりました。
それからも度々ぼんやりとした、霞がかった空間にいる夢を見たそうです。
遠くに何かの影が見えることもあれば、銅鑼の音が響くだけでなにも起こらないことも。
その遠くの影を追いかけても一向に近づくことは出来ません。
そんな夢を見るのは月に1度ほどの頻度だったのが、
週に1度になり、ついには毎晩見るように。
きっと曾祖父が何かを伝えたがっているのだと思った母は、広い空間に問いかけます。
「どうしたの?何か伝えたいことがあるの?
私で良ければ話を聞かせて?」
その問いに返事はなく、いつものように銅鑼の音が鳴り響くだけ。
私では声を聴いてあげることが出来ないんだと悔しがっていると、
初めてその夢の中で風が吹きました。
とても暖かな風だったと。
そんな夢を見た日に生まれたのが私です。
その日はちょうど曾祖父が亡くなってから1年後のことでした。
私が小学校の高学年になるころに母からこの話を聞かされました。
そして私の癖や仕草、好きな食べ物も曾祖父と同じだということも。
もしかしたら曾祖父の生まれ変わりなのかもしれないと驚いたものです。
母は私が生まれてからも霞がかった空間にいる夢は見るそうです。
回数も減り、年に一度だったり、数年に一度の時も。
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