夜中のインターホン

夜、食卓を囲んでいる最中にその話をしていると、親父は「じゃあ、この際だし新しいの買うか。カメラ付きの奴。その方が誰か来たときに分かりやすいし、録画もできるだろ？」と提案し、俺と母さんは「「賛成！」」と乗り気だった。
たまにセールスとか宗教が来るからいちいち応対するために出るのが面倒なのもあったので、母さんは嬉しそうだった。

それで週末に家族三人で電気店に行ってカメラ付きインターホンを購入。
2日後くらいには電気店の専属の人が取り付けに来てくれたので、俺も母さんと一緒に立ち会って、新品のインターホンを「「おお～！」」と二人で迎え入れた。
業者が帰った後も、機能テストとして俺が外からインターホンを押して、母さんが中からその映像を確かめて感動してた。
説明書を読みながら録画機能も試したが、あれすごいな。
ちょっと画質は粗いし、コマ送りみたいになるが、当時としては相手の顔もよく撮れるから素直にすごい。
その晩の親父もいつもはそのまま合鍵で家に入るんだが、母さんが携帯でメールしといたからわざわざインターホンを鳴らして入ってきてた。

我が家にインターホンを迎え入れてから5日くらいだったかな。
また深夜にインターホンが鳴った。

当然、俺は毎日のようにネトゲに没頭してたから起きてた。
その時は友達は朝早くから大学に行かないといけないからもう寝てたんだけど、俺は一人でレアアイテムを狩ってた。

で、無言の中に突然『ピンポーン、ピンポーン』ってインターホンが鳴ったわけよ。
音が二回連呼する設定にしてたからハッキリ聞こえた。
ビクっとなって、マウスを飛ばしそうになったが、部屋の明かりを消してゲームをしてた俺は、ディスプレイの明かりで悟られないように一旦画面を消して窓から家の前を覗いてみた。

まあ、夜中だから真っ暗なんだが。
でも、静まり返っているわけだから、何らかの音が聞こえたんだ。
『タッ、タッ』みたいな、軽やかな音。
僅かに暗い中に残像みたいなものが動いているようにも見えた。
だからこんな時間にピンポンダッシュか？と思い、すぐに一階に下りた。

一階に降りるとリビングに親父が居て、インターホンの録画を見ながら「おう、お前も起きたか」と映像を確認してた。
俺はゲームをしてただけだけど、親父と一緒に録画映像を確かめる事にした。
だけど、録画された映像は真っ暗闇で何も映ってなかった。

「何も見えないじゃん」
「くそー…。でも録画されてるって事は人の仕業だよな？」

そう。
このカメラ付きインターホンのおかげで、完全に生きてる誰かの仕業だと言う事が分かった。
防犯機能として、やっぱいいな、カメラ付きと録画機能。
夜中だと何も映らないのが欠点だが。

翌朝、朝食中に家族会議ではないが、昨晩のピンポンダッシュについて親父がこう言った。