「だってそこにいるもん」
投稿者:吉部乃丞 (1)
わたしが小学生の頃に体験した話です。
当時の我が家は貧乏で、梅雨前になるとシロアリも出るし、ゴキブリや、酷い時はムカデも目にするようなボロボロの平屋に、父、母、兄、わたし。そして、当時3歳の弟の5人家族で暮らしていました。
築何十年も経っているような古い造りの3LDK。その一番奥にある寝室にはちょっとした縁側がありました。
両親と幼い弟が川の字になって寝れるよう、ダブルサイズのベッドが真ん中に置いてあったり、洋服ダンスなどの収納家具で6畳ほどの寝室はいっぱいいっぱい。
そのため、わたしたちのおさがりや知り合いから貰って集めた弟のおもちゃたちは、縁側に大きなカゴを置き、その中に全部入れられていました。
家族でリサイクルショップに出かけたある日、「弟の誕生日が近いからプレゼントを買おう」ということになり、わたしと兄は自分のお小遣いで各々おもちゃを選んで購入しました。
わたしはままごとのレジ打ちセットを、兄はボタンを押すと音が鳴る電車のおもちゃを選び、持ち帰りました。
弟は喜んでその日からしばらくはそのふたつのおもちゃでずっと遊んでいました。
そんなある日、夜中の1時から2時頃、カゴの中に仕舞われているはずの兄が買った電車のおもちゃが、勝手に音を出すようになりました。
ボタンを押さないと鳴らないはずなので、最初は故障の可能性や、他のおもちゃと接しているからかもと疑いましたが、その後もほぼ毎日同じ時間帯に鳴るので、不気味で仕方ありませんでした。
そういったものは信じていませんでしたが、今度は日中に、弟がカゴの近くで縁側に向かって何か話しかけながらおもちゃで遊ぶようになり、確信に変わり始めていました。
この現象を母もおかしいと感じていたようで、わたしと兄が学校に行っている間に、ちょっと霊感のある友人を家に招いたそうです。
これまでにあったことを話はしたものの、具体的な場所までは伝えなかったらしいのですが、その友人はリビングに入るなり寝室の方を見ながら「今の話ってその場所でしょ」と縁側を指差しました。
母が驚き、「なんでわかったの?」と聞くと友人は一言「だってそこにいるもん」と答えました。
わたしたちが住んでいた平屋は、間に他の家を挟んではいますが、右も左も墓地に囲まれていて、縁側はそこを結ぶ橋のように一直線に伸びていました。
友人の話によると、縁側は霊たちの通り道になりやすいらしく、うちもその状況だったようです。基本的には通り道というだけなのですが、そこにおもちゃを置いてしまったことで、幼い子供の霊が留まってしまっているとのことでした。
また、弟のように小さい子供はそういった存在が見えることも多く、その霊といつも遊んでいるのだろうと言われました。
「害はないとは思うけど、移動した方がいいよ」と友人から言われ、母がおもちゃの入っているカゴごと別の場所に移動させたところ、不思議なことにそういった現象は二度と起こらなくなりました。
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