山でヘンテコな鳴き声の生物に襲われた話
投稿者:寇 (4)
でも、そんな猛スピードで下山してるのに一向に町並みは見えてこなかった。
いつもなら斜面が下る方を向けば、うっすらと町の輪郭というか、木々の向こう側に建物の影が肉眼でも見る事ができる。
それなのに、どれだけ下っても建物一つ見えてこなかった。
不思議なことに枝木の先にはひたすら山道が広がってた。
町が見えてこないせいで急激に疲労が襲ってきた。
さっきまではアドレナリンが分泌されてたのか、全然疲れなかったんだが、一気に心臓にきた。
足を止めて近くの大木に寄り掛かり息を整えるついでに後ろを振り返る。
あのヘンテコな生物は追ってきていないようだった。
逃げきれた。
そう思った矢先、遠くの方から『ホオオオオン』と遠吠えみたいな叫び声が聞こえた。
聞いたことが無い鳴き声だったけど、すぐにアレの声だと思い到った。
アレが追いかけてきていると思い、俺は息をつく暇もなく再び下山を始めた。
それから何時間下山をしているのか分からないくらい山道を下っていたと思う。
最早疲労困憊で走ると言うより足を引きずるように小走りだった。
日は既に傾いていて夕暮れになり、一向に山を抜け出せないから半泣きで鼻をすすっていた。
変な鳴き声は遠くの方からだがずっと後方から聞こえてくる。
終わりの見えない鬼ごっこをさせられている気分だった。
夜になったら何も見えなくてまともに歩けなくなると不安だったが、ちょうど巨木が倒れて屋根になった穴倉もどきを見つけた俺は、ひとまずそこに身を潜めた。
夜になれば当然気温が下がり肌寒くなってくるし、疲れ果てたせいかお腹が空いていた。
今頃両親は俺を心配して探しているだろうか。
今日の晩御飯は何だったんだろう。
そんな事を考えれば考える程、お腹は空くし、涙が出てきた。
どのくらいその場に居たか分からないが、いつの間にか俺は体育座りした状態で眠っていた。
それでハッと飛び起きて周囲を見渡したら既に朝になってて、昨日の変な生物がいないか倒木の穴倉から身を乗り出して確認したが、どうやら気配はないっぽい。
下山するなら今しかないと思った俺は、寝起きすぐに立ち上がって、立ち眩みと戦いながら山を下り始めた。
だが、数分もしないくらいかな。
また遠くの方だが『ホオオオン』って遠吠えが聞こえたからかなりビビった。
続けて風なのか分からないが、何か周辺の草木がガザガザガザっと揺れ始めるもんだから、いよいよ生きた心地がしなかった。
それでも必死に山を降り続けたんだけど、茂みを抜けたところで俺は愕然とした。
俺が飛び出した所は、昨日変な生物が出て来た小屋がある場所と瓜二つだった。
怖い