誰もが知ってる山で見たもの
投稿者:西郷 (1)
天王山という山はご存じだろうか?天王山は、江戸時代が始まるちょっと前に、明智光秀と豊臣秀吉が戦った天下分け目の山である。京都のはずれにあり、教科書にも載っている山だ。付近はタケノコが有名で、地元のハイカーや観光客にも人気の山。そのような山で起こた奇妙な話を今回はしたい。
あれは中学3年生のことであった。天王山の近くに住んでいた私は普段からよく天王山に登っていたが、その日は何かが違った。風のざわめき、うっそうとした森林……。晴れているにも関わらず、まるで雨が降り出す前のような雰囲気であった。普段なら歩いている途中に何人かは出会う登山客も、その日は1人も出会わなかった。少し奇妙に思いながらも私は頂上に向かって歩き始めた。
天王山の登山道の途中には酒解神社という小さな神社がある。眺望が良い展望台がある山の中腹に鳥居があり、頂上のすぐ手前に本殿がある。この神社の本殿にはいつもは人がいないのだが、この日は登山客を見かけないにもかかわらず1人老人がいた。そして私に話しかけた。「この山は呪われた山である。頂上に登らず引き返せ。」と。
普段から頻繁に上っている山がまさか呪われているはずがない、私はそう思った。けれども、老人は頑として譲らなかった。「昔の戦いで負けた侍が成仏できていない」。話し始めておよそ30分が経った。ついに私は根負けし、いぶかしく思いながらも、頂上には登らず下山することにした。
神社の鳥居のある山の中腹まで下りてくると、天気が悪くなってきたのか、展望台からの眺望が悪かった。気味悪さがさらに増して来たので、距離が短い道を通ろうと思い、行きとは違う道を駆け下りた。その途中の道のはずれに、黄色い花がおかれた小さな木の小屋があった。「あれ、こんな小屋あったっけ?」。私の記憶にはそんな小屋はなかったが、あまり通らない道だったため、思い違いをしていたのだと思った。その時、私の目の前を、赤い塊と青白い塊が通り過ぎた。
ちなみに、この出来事以降私は天王山には登っていない。
鬼かな?