特別背任
投稿者:SoKyo_suke (1)
これは、私がコロナ禍前に1か月ほど勤めた、ある病院のお話です。
そこから電話があったのは、私が転職活動中の6月に入った蒸し暑い日でした。
すでに4月に一度書類で落とされていたので不審に思いながらも、とりあえず話だけでも
聞いてみようと興味を惹かれたのは、その給与額の高さでした。
経理財務職を専門としていましたが、ブランク有りでの社会復帰を叶えるのに苦戦していて
その金額は以前のレベルに近く魅力的に思えたのです。
電話口でかなり経営状況が厳しい事、経営コンサルタント陣営として入社してほしいなど
特殊だったにも関わらず入社を決めました。
ただ、二度の面接で入った会議室と仕事部屋がひどく寒く、鳥肌が収まらなかったので勤務してからも
上着が手放せませんでした。
気にせず業務にあたり、バンクミーティングが行われる日に合わせて、資料の作成に残業をしていた時に
会議室にある椅子から異様な冷気を感じたのです。何となく気になって近づいてみると、前日にはなかった
段ボール箱が椅子の後ろに押し込まれているのが分かりました。
中を改めてみた私は、おびただしい数の領収書を確認して驚きました。それはどうしても見つからなかった
院長の放蕩三昧の遊興費を証明するものだったのです。その総額2億円余り。
実はこれがこの病院が傾いた原因でしたが、詳細な内容が分からず上司であるチーフコンサルタントが困り果てていたのです。
まるで私を招くようにその場所にあった椅子は、院長と壮絶な争いで自殺に追い込まれた財務部長の椅子だったことを
退職後に知らされました。結局、院長が病院を存続させるのに必要な書類に判を押さなかったため破産となりました。
私が書類を見つけた日から原因不明の高熱で休んでいた間の出来事でした。
あの財務部長は、院長を特別背任で訴えたかったのだと思います。
私の前職の人はあの椅子を見た途端、入社を辞退したのだそうです。
なんか専門的な話ってカッコイイ