恐山の冷水峠

青森県下北半島の中心に位置する霊峰恐山。日本三大霊山として多くの人に知られているが、その恐山の途中にある冷水峠はご存知だろうか。

俗界と霊界の境界とも呼ばれるこの場所は、喉を潤す為だけではなく、手水舎の役割も果たしている。三本のパイプからこんこんと流れる湧き水は不老水と呼ばれ、地元民だけではなく、遠方からやってきた人の中にも、この湧き水を汲みに行く人たちがいる。

私のいとこもその1人であった。元々霊感が強い私は肝試しや、霊の集まりそうな場所には決して行かないようにしていたが、遠方から来たいとこの頼みを断りきれなかった。

山道に酔ったのか、冷水峠に着いた頃には気分が悪かったが、外の空気はとても澄んでいた。先客の後ろへと並んでいた私が、水を汲もうと前へ進むと、急に水が止まってしまった。

驚く私とその様子を写真に撮るいとこ。私が車へ乗るとまた水が流れだしたのだ。いとこは喜び水を汲みに行った。

家に帰り母へ報告するも、私が写っている写真だけエラーで表示できなかった。母はいとこに写真を全て消すように指示し、私の背中をバンバン叩きながら「お母さんも同じだったよ」と笑って言った。

あなたは水を汲むことができるだろうか……