従姉妹が高校生の時の話です。
所属していた陸上部の練習が終わり、
帰ろうとした時に、教室に忘れ物をしたことに気づきました。
一緒に帰ろうとしていた友人ふたりに、
「忘れ物したから取ってくるわ」と言うと、
「んじゃ、ここで待ってるね」と言ってくれました。
教室に行くと、もう誰もいませんでした。
薄暗かったのですが、夕陽が差し込んでいたので、
明かりをつけずに、窓際の自分の机まで行き、
忘れ物をカバンに入れ、ふと窓から外を見ると、
外で待っている友人ふたりが、こちらに向かって手を振っています。
従姉妹も手を振り返して、待たせちゃ悪い、と急いで教室を出ました。
「ごめんねー」
従姉妹が友人ふたりのところへ行くと、
「さっき、後ろにいた子、誰だったん?」
と、言います。
「え? なんのこと」
従姉妹は意味がわかりません。
友人達が、言うところによると、窓際で従姉妹が机をごそごそやっているとき、
その後ろに、制服を着た女子生徒が立っており、こちらに向かって手を振っていたそうです。
ちょうど窓の桟の陰になって顔がわからなかったのですが、従姉妹と一緒にいるし、
自分たちに手を振るので、てっきり共通の友人の誰かだと思っていたのだそうです。
むろん、従姉妹の側に誰もいませんでしたし、教室には彼女ひとりだけだったのです。
「変なこと言わないでよー」
従姉妹はからかわれているのかと思いましたが、友人ふたりは確かに誰かいた、といいます。
「ああ、そういえば……」
友人たちが思い出したように、顔を見合わせました。
その人物は冬の制服を着ていたそうです。
七月の夏休み間近の出来事でした。























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