自分じゃない影
投稿者:ポム小僧 (1)
もう5〜6年前の話です。
私の家は母屋にお風呂・台所・トイレがあり、離れに自分の部屋があります。昔の古い畳の平家をどんどん増築して、今のようになりました。
なので毎日離れの方から畳の部屋を抜けて、さらに土間を通り、お風呂に行かなければならず、古さ・暗さが合間って、お風呂に入る時間が遅ければ遅いほど怖いです。
その日はそこまで遅い時間ではなく20時ごろにお風呂に入ることができました。同居している父方の祖母が居間でテレビを見ていたので、おやすみと挨拶して、自分の部屋に向かおうと居間の扉を開けた、その時のことです。
居間を出て廊下に出ると両サイドに部屋があり、部屋はすりガラスの引き戸で仕切られています。そのすりガラスに居間の明かりが溢れて私の影が映るのですが、いつもはガラスに映る自分のことなど特に気にならないのに、その日は何故かその影が気になってしまいました。
私はフェイスタオルを頭に頭巾のように巻いて、白系のの半袖短パンでいたので、そのように白くすりガラスに反射しています。でも、何かが違うんです。
私は横を向いているので横向きに映るはずなのですが、その影はなんだか正面を向いているよう。そして私より小さく、おばあさんのようでした。
見てはいけないものを見てしまったかもと思いましたが、気のせいだと言い聞かせ自分の部屋へ向かいました。
しかしすぐその後でした。親戚のおばさんがなくなったと、母が慌てて私の部屋へきました。そのおばさんは母方の祖母の姉にあたり、私が学生時代すごくお世話になったおばさんでした。民宿を営んで海の家もやっていたおばさんで、小柄で可愛らしいけど、威勢がよくて、明るく元気な商売上手な方でした。おばさんは、がんで闘病していると聞いていましたが、なかなかお見舞いにも行けずにいました。
その時、私は気づきました。『いつもおばさんは頭に手ぬぐいをかぶって、白い割烹着をきていた。私より背が低い。もしかするとさっきのは・・・」
きっとあの影は、おばさんが最後に挨拶に来てくれたのかもしれないです。気のせいかもしれませんが、私はそう信じています。
ご冥福をお祈りします。