カラスの落とし物
投稿者:ぴ (414)
それは突然空から落ちてきたのです。
私がおばあちゃんの畑で遊んでいたら、急に上からキラリと光るものが落ちてくるのが見えました。
私がそれを見ていたら、それは真っ逆さまに私のいる場所の数メートル先に落ちてきたのでした。
落ちてきたものを拾うと、それはガラス玉みたいなものでした。
丸くて透明なのですが、光の当たり具合によって発光するように光ります。
光の当たり具合でいろんな色に光るのがとても綺麗でした。
上を見るとカラスが数匹頭上を伺うように旋回しており、もしかしてカラスが落としたのかもしれないと思いました。
分からないけど、私は拾ったそのガラス玉を大事にズボンのポケットに入れたのです。
その日、昼ご飯を食べていると、畑にカラスが下りてきました。
おばあちゃんは一度追っ払ったけど、またしばらくすると畑に下りてくるのです。
普段のカラスだったら近づいていったらすぐに飛んで逃げます。
だけど、そのカラスはいつもと違いました。
おばあちゃんが仕事で畑に行った後に、私が近づいていくと、大きな目玉でじっと見てきます。
そしてばっと飛んだと思ったらばさばさっと私の肩に乗ってきたのです。
おばあちゃんに見せようと思って振り返ったとき、カラスが耳元で「返せ」って言ったのです。
確かにその声は鳴き声なんかじゃなかったです。
しっかり人のようなおじさんのようなしゃがれた声でした。
思い当たることと言ったら、朝空から降ってきたガラス玉です。
私が「いや」というと、カラスはばさばさと翼で私を攻撃してきました。
「きゃーきゃー」言っていると、近くで畑仕事を始めていたおばあちゃんが気づいて、慌ててこっちに走ってきました。
そのときにズボンのほうにカラスが近づいてポケットに顔を突っ込んできたのです。
おばあちゃんが私からカラスを追い払おうと近づいてくる前に、カラスが飛び立ちました。
はっとしてズボンのポケットを確認したけど、あの綺麗なガラス玉は奪われた後でした。
今でもあのガラス玉はカラスの落とし物だったと思っています。
あまりに綺麗で見たことがないような色をしていました。
あのカラスは人の言葉をしゃべれたし、普通のカラスの知能ではないと思いました。
あのガラス玉がどんなものだったかは分からないけど、相当大切なものだったんじゃないかと今は思うし、素直に返せば良かったと少しだけ後悔しています。
不思議な話でした。