おもちゃの片手

私は友達の付き添いで、家から少し遠いおもちゃ屋さんに行ったことがあります。

町の小さなおもちゃ屋さんで、私が行った日は私たち以外には一組のお客さんしかいませんでした。

だからとてもよく覚えているのです。

友達がお目当てのゲームソフトを物色しているときに、私はもう一組のお客さんとすれ違いました。

学生である私たちよりは年上でしたが、まだ若い夫婦みたいでした。

すぐ横に小学生くらいの大きな子供を連れており、その子が持っているおもちゃをみてぎょっとしました。

まるで本当の手みたいな精巧に作られた片手のおもちゃを持っていたのです。

最近のおもちゃってリアリティがあるけど、それはまるで本物みたいで、すごいおもちゃだなと思いました。

その後友達が悩んでいる間に、友達を脅かすために同じおもちゃを探してみたけど、このおもちゃ屋のどこにもそれは見つかりませんでした。

残念に思いながら友達の買い物に付き添い、レジでそのファミリーとまた会いました。

ついじっと見てしまったら、子供がこっちを見て手を振ってきたのです。

あの本物みたいなおもちゃの手で手を振ってきました。

私は手を振り返し、そして友達とソフトを購入して、店を出たのです。

その帰り道に、さっきの家族の話が話題になりました。

しかし、おかしいのです。私が見たのは若い夫婦と小学生の3人家族でした。

でも友達は子供なんて見てないっていうのです。

友達が見た客はカップルっぽい二人で、そこに子供なんていなかったと言いました。

そこで思い出してみたのですが、確かに夫婦だと思い込んでいた二人はすごく若かったです。

小学生くらいの子供がいるように見えませんでした。

それに二人が子供を気にかけたり、話しかけている様子は一度も見られませんでした。

私が見た生々しい手のおもちゃは、おもちゃじゃなかったのかもしれません。

その後、同じおもちゃ屋さんに聞いてみたけど、そんなおもちゃは置いていないと言われました。

ネットで探したけど同じようなものは見つからなかったし、あれはおもちゃじゃなく本物だったのではないかと今思い出すとゾッとします。