兵隊さん ありがとう
投稿者:こあラっこ (2)
私は就職のため、のどかな地方のひっそりとした町に引っ越して来た。アパートの窓からは田園風景が広がっていた。
バス停まで徒歩30秒で通勤はバスに乗ってする予定だ。
引っ越しの片付けが終わったので夕食を買いにスーパーにいくついでにバス停の場所も確認しに行った。
バス停の横には兵隊さんが敬礼をしている古い石像が立っていた。「きっとこの地にゆかりの偉い人なんだろう。」その程度でその石像がどのようなものなのか気にも止めなかった。
家に帰ると雨が降って来たので窓とカーテンを閉めてお風呂に入り夕食を食べてその日は寝た。次の日の朝はもう雨はあがっていた。その日もいつも通り会社から帰ると食事をしてお風呂に入ってから寝た。
そしてその日の夜初めてあの不思議な夢を見た。それは軍人の服を着た兵隊さんが「今日は乾いてるから水を一杯貰えませんか」そう言うと消えてしまった。それからも毎日同じ夢を見るようになった。でも何故か夢を見ない日もあった。それは何故なのだろうか。
その日から、夢を見たかどうか毎日カレンダーにつけてみた。しばらくすると、雨の日だけ夢を見ない事に気がついた。
アパートのオーナーにある日その話をすると「きっとそれはバス停の横の像の兵隊さんの夢なんだと思う。この部屋にあなたが住む前に入っていたおばあちゃんは、雨の日以外兵隊さんに毎日お水をお供えしていた。ところがわけあってずっと離れてくらしていた娘さんが引き取りに来て一緒に暮らせる事になったので出て行った」と話してくれた。そしてオーナーは続けて「今度からあなたがおばあちゃんに代わって雨が降らない日はお水をお供えしてはどうか?あの像にお水をお供えすると幸運が訪れると言われているんだよ」と勧めてくれた。
次の日から私は、雨の日以外は毎日、兵隊さんの像にお水をあげる事をルーティンにした。それからはあの夢を見なくなった。それだけではない、片思いだった彼から告白されて結婚まで出来た。それもあの兵隊さんのおかげなのか。
兵隊さんの恩返し